9月26日の東北楽天の優勝決定シーンは感動的だった。
マジック2となっていたこの日、2位の千葉ロッテはすでに敗れており、楽天が埼玉西武に勝てば優勝。打の柱ジョーンズの逆転打で4-3とリードして迎えた9回裏、エース田中将大がマウンドに立った。ご存じの通り、田中将は前人未到の開幕22連勝を達成している。この日までの楽天の貯金26の大半を稼いでいる田中将に胴上げ投手になってもらおうという星野監督の粋な計らいだ。
が、内野安打と四球、送りバントで1死2・3塁のピンチを招く。迎えるのは西武の中軸、3番栗山と4番浅村。長打が出ればサヨナラ負けで優勝がお預けになるだけでなく、田中将の連勝記録も止まる。まるで野球の神様が「優勝は簡単にはできないんだぞ」と楽天に試練を与えたかのような状況だ。
しかし、ここからの田中将の投球がすごかった。中途半端なボールを投げて打たれたら悔いが残るとばかりに武器のスライダーやスプリットさえ封印。全球ストレートの真っ向勝負で栗山、浅村をともに三振で退け、優勝をもぎ取った。この時の田中将には大投手のオーラがあった。連勝記録とは別の伝説になるシーンだったといえる。
エース移籍の穴は大きいが…
東北楽天球団の台所事情
優勝が決まった今、田中将はクライマックスシリーズを勝ち抜き、日本シリーズにも勝って日本一になることに集中しているだろう。だが、それが終わると別の目標が生まれることが濃厚だ。メジャーへの挑戦である。
田中将は「将来的にはメジャーに挑戦したい」と球団に伝えているといわれるが、「将来的」というのは各方面に配慮した発言だろう。本音は今すぐにでも行きたいと思っているはずだ。田中将ほどの投手になれば、より高いレベルで投げたいという思いが強くなるし、メジャーでは活躍次第で日本とは比較にならないほどの大金が稼げる。その目的を果たすにはより若いうちに行く方が得策だからだ。