子育てを言い訳にやりたい放題の社員も
職場で本当に守られるべきなのは誰か?

 今回は、子育てにいそしむある30代の男性社員と、その同僚や上司が織りなす職場の「悶える人間模様」をお伝えしよう。

 少子高齢化が進む日本では、男性の子育て参加の必要性が唱えられている。子育てへの意識が高い男性社員は「イクメン」と呼ばれ、注目を浴びる。

 しかし、男性に限らず、仕事と子育てを両立できる風土は、いまだ職場に根付いていない。そのため専門家やメディアは、「企業は子育てにもっと理解を示すべき」というように、当事者の声のみで職場の課題を判断しようとする傾向がある。

 しかし、そのようなアプローチだけでは実態を的確に捉えることはできないと筆者は思う。職場では、様々な立場の社員の利害関係が複雑に絡み合っている。連載第12回でも紹介したとおり、育休明けなどの理由で職場の協力を優先的に受けられる立場にある社員の一部には、その「特権」を必要以上に利用しようとする者も散見される。一方で、子育て参加の重要性が唱えられる風潮を口実にして、わがままな働き方をする者も一部にいるようだ。

 その結果、第12回で紹介したように、本来は善意で彼らを手助けしたり、我慢していた周囲のまじめな社員たちの不公平感が増大し、職場が混乱するケースなどが報告されている。だが、この手の「ブラック社員」が抱える問題を炙り出すことは難しい。パワハラやセクハラといった上司からの圧力ばかりでなく、一般社員が「悶える職場」の原因をつくるケースもあるのだ。

 今回紹介するのは、子育てを口実にしてわがままな働き方をする「黒いイクメン」だが、こうしたケースでは周囲の社員の言い分を聞かないと、真の課題は見えてこない。そのため今回も管理職への聞き取りを行うこととした。