DV(ドメスティックバイオレンス)と言えば、多くの人が「夫(男性)から妻(女性)」というケースを想像するのではないでしょうか。しかし、実際にはそうではありません。内閣府が2011年に行なった調査では、約20%の夫(男性)が妻(女性)から被害を受けたことがあると答えているそうです。夫は妻から暴力を受けていても、なかなか相談できない人が多く、その上、家庭内というプライベートな空間で行なわれるケースがほとんどなため、潜在的な被害者も多そうです。身を守るにはどうすればいいのでしょうか。覚えておいてほしいのが、お互いの関係性が「配偶者」、「男女」であるがゆえに、男性側が気をつけなければならないポイントがあることです。(弁護士・竹森現紗、協力・弁護士ドットコム

妻が暴力的に変貌
夫は耐える必要なし

「毎日のように『稼ぎがない!』とののしられます……」

 夫婦関係に関する法律相談は、離婚案件が圧倒的に多いのですが、最近、妻からのドメスティックバイオレンス(DV)に悩む男性からの相談が増えています。

 他にも、寄せられるご相談として、「別れ話をしたら、『職場にあることないこと話して退職に追い込んでやる』と脅される」という精神的な暴力から、「夫婦げんかの際、包丁を突きつけられた」、「喧嘩になると、手当たり次第、物を投げるので、それがあたって骨折をした」というような、身の危険を感じるものまでさまざまです。

 そもそも、男性と女性では力の差があるため、夫が妻から暴力を受けていても、「男が女に手を上げてはいけない」という世間一般の認識があるため、ただひたすら耐えなくてはいけないと思っている男性も少なくありません。

 また、男性のなかには、「妻がこんなに暴力的になってしまったのは、自分のせいだ」と思い込み、誰にも相談できずに悩み、耐えている方もいます。

 他人に肉体的、精神的に危害を加えることは、男も女も関係なく、あってはならないことです。「男は女に手を上げてはいけない」という認識は、「男が女から手を上げられたら耐えなくてはいけない」ということと、同義ではないはずです。

 妻からのDVに密かに悩む夫のための、法的対処法を解説しましょう。