来年3月の羽田空港国際線の発着枠増に伴う配分で、今回も全日本空輸(ANA)に軍配が上がった。
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国土交通省は、国内航空会社に割り当てる16枠のうち、ANAに11枠、日本航空(JAL)に5枠を配分することを決定。「公的支援によって再生したJALとANAとの間で大きな体力差が生じており、このまま放っておくと競争環境にゆがみが生じかねない」(国交省)というのが理由だが、ANAや自民党の意向をくんだとみられており、羽田国内線に続く傾斜配分に、不透明感が漂っている。
国交省の試算はこうだ。JALが会社更生法を適用したことによって免除される税金は、今後6年間にわたり約2000億円が見込まれる一方で、羽田の国際線の発着枠は1枠で年間約10億円の利益をもたらすとされる。今回は6枠差であるから、1年間でANAとJALの間で生じる利益の差は60億円。10年間で600億円、20年間だと1200億円になり、今回の傾斜配分をもって「格差がある程度是正される」(平岡成哲・国交省航空事業課長)という。
格差是正はいつまで続く
ところが、この試算はあまりにも丼勘定と言わざるを得ない。
そもそも、国際線の枠は、国内線と違って回収再配分がなされない。企業が存続する限り、いつまでも続く。20年間の根拠は薄い。
もう一つが、増枠によるプラス面しか見ていないことである。供給量の増加は、航空会社にとって競争激化を意味する。今回、ANAだけに羽田枠が配分され、JALにゼロ配分だったのは、ドイツ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、カナダの5カ国だ。いずれの国へもJALは成田から便を飛ばしているが、「都心に近い羽田に新路線ができれば、地理的に不利な成田路線は競争力を失う」(航空関係者)。