こうした零細飲食店に目を着けて日本に進出してきたのが、コストコやメトロなどの業務用スーパーです。近年ではこうした零細飲食店、とくに居酒屋マーケットに的を絞った業務用通販会社が大きく業績を伸ばしています。
食品卸最大手の三菱食品が手掛ける業務用通販部門「リクエ」の場合、2005年の立ち上げからわずか5年で50億円ものビジネスに成長し、2013年度は売上85億円を目標にしています。居酒屋マーケットを対象とする業務用通販会社は他にも多数あり、各社とも業績を伸ばしています。
もう1つの代表例が工場マーケットです。全国には50万事業所もの工場がありますが、このうち約半分が従業員3人以下の零細工場です。
工場に対しては通常、機械工具商と言われるルートセールスの販売店が出入りしており、工場で必要な資材や工具を販売しています。ところがこうした販売店も、従業員3人以下の零細工場に顔を出すことはありません。顔を出したところで十分な売上を得ることができないからです。
こうした零細工場マーケットに対して業務用通販を行っている会社が、東証一部上場のMonotaRO(モノタロウ)です。同社は市況のきわめて厳しい工場マーケットの中で、毎月1万件以上の新規口座を獲得し、毎年3割以上のペースで売上を伸ばしている優良企業です。近年では、やはり多くの会社が零細工場向けの業務用通販に参入してきています。
文房具通販で大成功した
アスクルのビジネス
そして私たちの身近には、ビジネスマンなら誰もが知っている「雨ざらし市場」の成功企業があります。それがアスクルです。
アスクルは、中小・零細企業向けの文房具通信販売で大成功した会社です。
もともと法人向けの文具販売は、文具卸と言われるルートセールスの販売店が、各企業を回って文房具を販売していました。
ところが、日本の会社の9割以上は中小・零細企業です。毎月の売上が見込める大企業には日参して通う文具卸の営業マンも、中小・零細企業にはなかなか足を運ぶことができません。その一方で、町の文房具店はどんどん衰退していきますから、それらの企業は文房具を入手しづらくなっていきました。
こうした中小・零細企業などの文房具マーケットをターゲットにしたのがアスクルなのです。同社は大手文具メーカーのプラスから営業譲渡を受けてスタートしましたが、現在では年商2000億円を超える大企業に成長しています。
また、この分野に後発で参入したカウネット(コクヨの連結子会社)、たのめーる(大塚商会が運営)なども、急成長のビジネスに育っています。