部門別採算制度「アメーバ経営」は、これまで京セラの特別な経営システムと見られていましたが、日本航空(以下JAL)の再生により、大企業においても経営改善に大きな効果をあげ得ることが証明されました。

本連載では、「アメーバ経営」の目的が「全員参加の経営」であり、「人の活性化」を目指す仕組みであること、またなぜ、さまざまな業種に適用が可能であるのかをご理解いただけるよう、事例を交えご説明していきます。

 JALが、その破綻から2年8ヵ月で再上場を果たしたことは、「JALの奇跡」と言われ、メディアにも様々に取り上げられています。

 2010年2月に稲盛名誉会長はJALの会長に就任されましたが、引き受けると決めたものの、JALの再建について自信や勝算があった訳ではなく、むしろ全く無かったと言って良いくらいであったと、後に語っておられました。

 JALに着任する前から稲盛名誉会長は、「自分が引き受けるのであれば、自分が今日までやってきた経営は、『フィロソフィ』による幹部と全社員の意識改革と部門別採算制度『アメーバ経営』であり、これしかない」と、私達に話されていました。

 京セラグループでは、「フィロソフィ」と「アメーバ経営」は、「車の両輪」であり、「表裏一体」で切り離すことができないモノであると考えています。

「フィロソフィ」については、改めてお話しすることにして、本稿の主題である「アメーバ経営」について、お話しいたします。

1.部門別採算制度がなぜ必要か

「アメーバ経営」は、小集団部門別採算制度の呼び名であります。

 京セラ(旧社名 京都セラミック)は1959年4月に28名の従業員で設立されました。この初年度の売上は2600万円でありましたが、それから53年が経過した2013年3月期では、売上が1兆2800億円、従業員が全世界で7万1000名というグローバル企業となりました。

 この驚異的な成長においても、「アメーバ経営」を唯一の経営システムとして経営を行ってきました。その結果、様々な経済危機や急激な円高の進行のあった53年間で、ただの一度も赤字となることはありませんでした。

 それでは、「部門別採算制度が何故必要なのか」について、お話ししたいと思います。