常にそこにいるヴィジブルなCFOが理想 <br />現場を理解した判断ができてこそ存在価値がある<br />――梅田千史・MSD取締役執行役員財務部門統括「昔は2徹(2日連続徹夜のこと)なんて当たり前でした。でもそれは必ずしも成果を生み出さないっていうことが、ようやく分かってきました。いまでは率先して早く帰るように部下に言っています」と話す梅田千史・MSD取締役執行役員財務部門統括(右)。左は永井真理子・デロイト トーマツ コンサルティング トーマル グループCFOプログラム、マネジャー

中国のバイドゥ社やJPモルガン・チェース、タイム・ワーナー・ケーブルなど、世界を見渡すと女性CFOが増えている。日本では女性管理職でさえ増えていない状況で、世界の流れからは取り残されている。だが、世界大手製薬会社の一角を占める米メルクの日本法人MSDでは、その流れにきっちりと乗っている。梅田千史氏は2012年4月から同社の財務部門を率いる。公式、非公式問わず、社内でのコミュニケーションによって得られる情報が、ファイナンスとして重要な戦略的判断やアドバイスに活きていると話す。本連載でも初の女性CFOの登場という事で、女性同士の対談とした。3歳と1歳の2児の母でもある梅田氏の、ワーク・ライフ・バランスを大切にするための工夫は、結果的にファイナンス部門全体へ業務効率の改善とコミュニケーションの活性化という、思わぬ副産物を生み出しているようだ。(編集・構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

ファイナンスを知らなければ
会社の全体像は掴めない

常にそこにいるヴィジブルなCFOが理想 <br />現場を理解した判断ができてこそ存在価値がある<br />――梅田千史・MSD取締役執行役員財務部門統括うめだ・ちふみ
1998年3月東京大学法学部卒業。同年4月アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)入社。01年1月、GE International Inc.入社。GEコーポレート オーディターとして活躍。04年2月GEアジアFP&Aマネージャー・スタッフエグゼクティブ。05年7月ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン・インク ファイナンス&アドミニストレーションディレクター。08年11月シェリング・プラウ入社。08年11月財務部門財務計画部BP&Aコントローラー、10年2月MSD財務部門GHHファイナンスディレクター。11年2月経営戦略部門ストラテジー・リアライゼーション・アンド・オペレーショナル・エクセレンス シニアディレクター。12年4月取締役執行役員財務部門統括。3歳と1歳の2児の母。 
Photo by Kazutoshi Sumitomo

永井 梅田さんはもともとコンサルタントとしてキャリアをスタートされていますが、ファイナンスの仕事へ転職するきっかけは何だったのでしょうか。

梅田 コンサルタントとして仕事をしていたとき、お客さま企業の人事や総務の部署の方とお仕事をする機会が多かったのですが、やはり企業がどのようなビジネスモデルで収益を上げていて、どのような課題があって、ということをきちんと理解していないと、本当の意味でお役に立つ事ができないんだということを痛感しました。私は何も分かっていなかった、と。ファイナンスは非常に大事だなと思いました。

 でも、その時点では転職しようとは思っていなかったんですよ。たまたま日経新聞の日曜版に、GEのコーポレート・オーディット・スタッフ(CAS、グループ内の各事業会社の会計・コンプライアンス監査を行い、その事業の課題を見つけ改善していく役割。幹部候補社員として教育される)の求人が載っていました。

 私には魅力的に映りました。ご存知のようにGEは幅広く事業を展開しており、海外も含めて、インターナルオーディター(Internal Auditor:内部監査人)としていろいろな現場を見ることができるということだったからです。

 そのままコンサルタントとしてキャリアを積めば、もしかしたらファイナンスのことも分かるようになったのかもしれませんが……。ファイナンスのことなど、きちんと勉強もしていませんでしたし、よく転職に踏み切ったなと今でも思います。本当に行き当たりばったりでした(笑)。