三大感染症(HIV/エイズ、結核、マラリア)対策基金として2002年に設立された世界基金(グローバル・ファンド)。途上国の三疾病対策のために資金を拠出する機関で、各国の政府や民間財団、企業からの拠出金によって成り立っている。2000年のG8九州沖縄サミットで、感染症対策を主要議題として取り上げたことが設立のきっかけとなったことから、日本は世界基金の“生みの親”とも言われる。その世界基金の戦略投資効果局長として活躍する國井修氏に、世界の感染症の現状と課題、日本の政府や企業の求められる役割等について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
政治や経済、社会問題と
密接に関係する三大感染症
世界エイズ・結核・マラリア対策基金 戦略投資効果局長。1988年自治医科大学卒。医師、公衆衛生学修士、医学博士。内科医として大学病院等で勤務後、僻地医療に従事。また緊急医療のNGOであるAMDAの副代表として、難民への医療援助に従事。ハーバード大学公衆衛生大学院留学、自治医科大学衛生学助手などを歴任。2001~2004年、外務省調査計画課に勤務(課長補佐)。この間、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設立にも関与した。2004年より長崎大学熱帯医学研究所教授、2006年より国連児童基金(ユニセフ)に勤務し、本部にて保健戦略上級アドバイザー、ミャンマー事務所保健・栄養チーフ、ソマリア事務所保健・栄養・水衛生支援事業部長等を歴任した。2013年3月より現職。Photo:DOL
――世界基金(The Global Fund:ザ・グローバル・ファンド)は設立された2002年から一貫して三大感染症(HIV/エイズ、マラリア、結核)の撲滅に取り組んでいます。しかし、アフリカをはじめ東南アジア、南アフリカなど、感染が拡大していると聞きます。現状をどのように分析しているのでしょうか。
三大感染症は1990年から爆発的に流行しました。これは単なる健康問題ではなく、経済や政治にも悪影響を及ぼす、非常に大きな脅威でした。放置していれば、国が破滅してしまうのではないかと思えるほどです。
病気が流行すると人々は農作業などの仕事ができなくなります。そうした人が増えれば国の経済全体に大きな影響を与えます。そうすると、貧困の罠に嵌ってしまいます。アフリカではザンビアやマラウィは特に深刻でした。
なかにはマラリアに1年で6回も罹る人もいました。熱が出て、体力が消耗してしまい、なかなか仕事に復帰できない。結核は完治するまでに長い期間治療が必要です。HIV/エイズについても、バタバタと20~30代の人たちが死んでいきました。当時を思い返すと、「バタバタと」という表現が本当に正しいと思います。残された子どもたちは孤児となって、貧困から逃れるのは非常に難しくなる。ひどい地域では、3人に1人がHIV/エイズに罹っていました。