「やはり当事者でなければ、わからないことが多い。安全な場所で当事者同士がつながれる場をもっと増やすことが大事ですし、元引きこもりの人たちが、もっと声を出して、もっと活動できるようになると、いいと思いますね」

 宮地教授が詳しい依存症についても、上下関係の治療では良くならないことが明らかになった。また、当事者同士が語ることで回復していく流れもわかってきている。このプロセスは、引きこもり状態からの脱却を求める人たちにとっても同じだ。

 しかし、診察室を訪れる当事者には男女差があって、女性は語ろうとするのに対し、男性はあまり語らないという。

「お互いに弱音を吐けない。弱みを見せ合うような関係性を持てないことが大きい。1人だと、グルグル回って余計に怖くなる悪循環に陥る。少しでも誰かとつながって、安心できる場で弱さを一通り話せるうえ、わかってもらえたという感覚があると、次に進む気になることができます」

 一方で、家族も、本人が引きこもっている状況をひた隠しにしているケースが実に多い。

 しかし、ずっと隠し続けていけばいくほど、それ自体がまた膿になる。家族は家族同士でつながっていくことが、とても大事だ。

「傷つきやすさや強烈な恥の感覚を減らしていく。そのためには、実は引きこもる人たちはたくさんいると伝えるだけでも、そんなに自分は特別な存在ではなく、誰でもなり得るということがわかる。自助的な動きを作っていくうえで、役に立つかなという気もします」

 いずれにしても、長年、引きこもりの世界を見てきて思うのは、大きな出口はないということ。だから、小さな風穴を開ける作業を積み重ねていくような、お互いに気の遠くなる忍耐力も必要なのだろう。

 自分の弱い部分を語り始めたとき、その当事者の中に何が起きているのか。