脳卒中の約1割を占める「クモ膜下出血(SAH)」は、中高年期の突然死要因の一つ。「今までに経験したことがないほどの頭痛」を伴うといわれているが、実際に救急外来を受診する急性頭痛のうち、SAHは数%にすぎない。何をもって「SAHに伴う危険な頭痛」というのだろう。医学誌の「JAMA」に掲載されたカナダの研究者チームによる見分け方を紹介する。

 研究者チームは、2006年7月~10年4月に救急外来を訪れた患者のうち、「痛みが1時間以内にピークに達する頭痛」があり、しびれなどの神経症状は認められなかった約2000人を調査。このうち、SAHと診断されたのは6.2%だった。

 SAHの診断には従来、(1)40歳以上、(2)首の痛みや硬直、(3)意識消失(目撃者あり)、(4)運動時に発作が生じる、の四つが使われている。これだけでもSAHのスクリーニング効果は9割もあるのだが、今回これに「雷鳴頭痛」と「首を曲げることができない」を加えると診断度が100%に達することがわかった。

 「雷鳴頭痛」とは、発症後1分未満に痛みがピークに達する激越な頭痛を指す。SAHや脳内出血、脳静脈血栓症など重大な疾患の兆候であることが多い。さらに「顎を胸につけられない」「仰向けに寝て、頭を3インチ(約7.5センチメートル)持ち上げることができない(他人が持ち上げる場合は抵抗がある)」など首の屈曲制限が加わると、SAHの可能性が高くなるわけだ。このほか、1回以上の嘔吐、下の血圧が100mmHg以上、上の血圧が160mmHg以上というのも、手がかりとなる。

 もちろん、最終的な確定診断にはCTを使った画像検査や髄液を調べる検査が必要だが、注意すべき「雷鳴頭痛」と「首を曲げることができない」という危険な自覚症状を知っておくといい。本格的な発作の前に、比較的軽めの警告症状が出ることもある。思い当たる症状があれば脳神経外科を受診してみること。また、59歳未満の若年SAHは11~1月の冬季、午前6~10時の発症が多いことも付記しておく。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド