今や国民的サラリーマン漫画と呼ばれるようになった『釣りバカ日誌』。漫画は現在でも『ビッグコミックオリジナル』(小学館)で連載中だが、映画シリーズは22作で終了。惜しむファンも多かった。ところが、なんとその笑いと涙を受け継いだ映画『あさひるばん』が誕生、11月29日より全国松竹系で公開される。監督は原作者でもあるやまさき十三氏。72歳にして初の監督作品を世に送り出した。もともと映画人だったというやまさき氏は、漫画原作に転向して不動の地位を確立した今、なぜ映画の世界に戻ってきたのか。氏が自らの人生を振り返りながら、映画の見どころとこれまでの作品にかける思いを語る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
72歳にして初の映画監督作品
『あさひるばん』ができるまで
――今回、映画『あさひるばん』を72歳にして初監督されましたが、映画を撮るきっかけは何でしたか。
1941年生まれ。宮崎県出身。早稲田大学第一文学部卒。東映でテレビ映画製作所の助監督を務め、『プレイガール』『柔道一直線』『キイハンター』などの作品に携わる。その後漫画原作者に転向し、『釣りバカ日誌』(小学館)で一躍有名に。同作は1982年度小学館漫画賞を受賞。実写映画は22作制作され、テレビアニメ化もされる。その他の漫画原作に『初恋甲子園』『おかしな2人』『愛しのチイパッパ』『あさひるばん』など。
世界的な巨匠・宮崎駿監督が、72歳で引退を表明したのと同じ年齢で映画の初監督をやるわけなので、周囲からは「何を血迷ったのか」と思われているかもしれませんね(笑)。
きっかけはもう3年も前ですが、知り合いのプロデューサーから、吉本興業さんが主催する「沖縄国際映画祭」に短編で参加しないかと誘っていただいたのがきっかけです。
“ラフ&ピース”がテーマなので、最初は國村隼さん主演で短編の喜劇を撮ろうという話でしたが、いつの間にか「長編できちんとしたものを撮ろう」ということになって。
そのときも、短編のノリでOKしてしまったのが、後から考えると迂闊でしたね(笑)。それから色々考えるなかで、最終的に僕の郷里の宮崎県を舞台にすることになった。実際にロケハンに行ったら、宮崎県知事、宮崎市長、地元の協賛企業をはじめ、皆さんとても協力的で、大半のロケを宮崎でやることになりました。それと並行して脚本づくりもやるという、忙しいスケジュールでしたね。
――やまさき監督は若いときに、映画会社で助監督をされていたと聞きます。これまでどのようなお仕事をされてきたのですか。
そうですね。大学卒業後に東映のテレビ映画製作所で『キイハンター』や『プレイガール』などの助監督をやりました。そして、「『キイハンター』の監督をしないか」という話があり、脚本も書き上げましたが、その頃同時に会社と僕らの組合の間で争議が発生して、監督の話もなくなってしまいました。