写真 加藤昌人 |
初めてコンピュータに触れたのは7歳のとき。雑誌に載っていた簡単なプログラムを入力すると、ゲームソフトが動き出す。そのおもしろさに夢中になった。父の転勤で、8歳で米国に渡った。日本から専門誌を取り寄せて独学するうちに、英語よりも早くコンピュータ言語が身についていた。
14歳のとき、自由研究で三次元コンピュータ・グラフィックス(CG)を自動生成するソフトを1人で作り上げた。それがカリフォルニア州のコンテストで表彰され、ある大学教授から「研究室に来ないか」と誘われた。自宅からその大学まで、クルマで片道1時間半。まだ運転免許も持たなかったため、飛び級入学は諦めた。後にその教授がCG研究では全米トップクラスであることを知った。
帰国後、千葉大学の飛び級制度を使い、17歳で大学に進んだ。「受験勉強に時間を割くより、早く研究に打ち込みたかった」。専門分野の情報画像工学科ではなく、あえて物理学科を選んだのは、これまでCGを独学してきた「自分の視野を広げるため」。そして、物理ベースの光学計算の汎用性を高めるアーキテクチャ(基本設計)の開発が、情報処理推進機構による「天才プログラマー」認定につながった。
今は「CGと金融工学など、融合分野の研究に引かれる」という。「米国には、同年代にすごいヤツが山ほどいる」。最先端で勝負し続けるために、再び海を渡る。
(ジャーナリスト 田原寛)
上野康平(Kohei Ueno)●コンピュータ・プログラマー 1989年生まれ。小学3年生からの6年間を米国で過ごす。2006年、千葉大学理学部入学。2007年10月、独立行政法人・情報処理推進機構が独創性に秀でたソフトウエア開発者を支援する「未踏ソフトウェア創造事業」で「天才プログラマー/スーパークリエイター」に認定される。