日本最大の家電量販チェーンであるヤマダ電機が、この中間期に営業赤字に転落した。これまで、伝説ともいわれる成長を遂げてきたヤマダに、いったい何が起こっているのか。

 11月上旬、ヤマダ電機が開いた2013年4~9月期決算のアナリスト説明会。その翌日、あるアナリストはヤマダから前代未聞のメールを受け取った。

「説明会で示した向こう3年間の経営数値はあくまでも成長イメージであり、中期経営計画としての数字ではありません。また、それらにおける細かい数値については一切コメントは行いません」

 説明会で岡本潤取締役が、「17年3月期に売上高2兆2800億円、経常利益1002億円」などの目標をぶち上げたが、それが単なるイメージにすぎないというのだから驚かないはずはない。

 しかも、詳細についての言及は一切行わないとまで言い、経営の混乱ぶりがうかがえる。

 1983年に設立後、わずか二十数年で売上高2兆円企業にのし上がったヤマダ。伝説とまでいわれた急成長が今、曲がり角に来ている。この4~9月期の粗利益率は前年同期比2.8ポイントも低下し、23億円の営業赤字に落ち込んだ。

 赤字は営業損益段階だけにとどまらない。経常損益はメーカーからの仕入れ割引などで黒字を確保したものの、最終損益でも41億円の赤字に転落。4~9月期の営業赤字と最終赤字はどちらも、03年3月期に連結決算に移行して以来、初だ。

 ヤマダにいったい何が起こっているのか。

 彼ら自身も認めるのが、行き過ぎた値下げだ。商品の価格決定権を本部から店長に移管、インターネット販売業者に真っ向から対抗してすっかり疲弊してしまった。

インターネット価格にも徹底対抗を誓うヤマダ電機だが、行き過ぎた値下げで粗利率が低下した
Photo by Mieko Arai

 それだけではない。「ヤマダの経営陣は知らないかもしれないが、ネット業者などに横流ししていた店舗があった」と指摘するメーカー関係者もいる。ヤマダ幹部は「うちを陥れるためにそう言ってる人がいる」と反論するが、あまりの急激な粗利率の低下は、こんなことでもないと説明がつかないと業界関係者はみているのだ。

 通期では年末の書き入れ時や消費増税前の駆け込み需要が望めるため、黒字確保が可能という見方が大勢だ。行き過ぎた値下げの防止策もすでに講じているという。