一年を総括するこの時期、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の読者が選出した今年の「ベスト経営書」が発表された。ビジネス書のベストセラー・ランキングとは異なる、硬派な読者像が反映された「読み応えのある」経営書ランキングと言えそうだ。
上位3冊は日本人著者
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌(ダイヤモンド社刊)が、「読者が選ぶベスト経営書2013」を発表した。対象となったのは、2012年11月から2013年10月までに発行された書籍。編集部が読者に「他の人に勧めたい本」「後世に残したいもの」と呼びかけ、3冊まで投票してもらった。1位に選ばれたのは、三谷宏治著『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)。2位は伊賀泰代著『採用基準』(ダイヤモンド社)、3位は入山章栄著『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)となった。
1位の『経営戦略全史』は400頁を超える大著で、定価も2890円と高価だ。過去100年間に登場した戦略コンセプトを一同に並べ、ひとつのストーリーに仕立てて紹介したもので、飽きずに最後まで読み進められる。入門書として若手に支持されただけでなく、経営学者や経営コンサルタントからの評価も高い。読者からも「これまでの経営戦略史を理解することで、これからの経営戦略のあり方を考えることができた」という声も。従来の手軽に戦略論の全体像が分かる本とは一線を画す筆致が、多くの票を獲得した理由のようだ。
2位の『採用基準』は元マッキンゼーの採用マネジャーが同社の人材観を紹介したもの。地頭のよさや論理的思考力より、リーダーシップが重要という論旨と、さらにリーダーシップはいまの日本に最も必要なスキルと力説する。読者からは「目指すべき人材像に確信を持つことができた」「リーダーシップに関する本を何冊か読んでいるが、本書を読んでリーダーシップとは何かを理解することができた」など多くの感想が寄せられた。いわゆる「マッキンゼー本」の域を超えて支持されたようだ。
3位の『世界の経営学者はいま何を考えているのか』は、帯の「ドラッカーなんて誰も読まない?」「ポーターはもう通用しない?」などの挑発的なコピーが目を引く。その一方で、学問となりにくいと言われる経営学で科学的実証が進んでいる最前線の様相を紹介。学問としての経営学の面白さを再認識させる本として人気のようだ。読者からも「経営学も科学であり、統計的検証が必要だという主張はその通りだ」と共感を得たようだ。