ビジネス書ブームが続いている。2010年には「ビジネス書大賞」が設立され、コアな読み手を対象とした「ビジネス書検定」も登場するなど、ここ数年、出版業界を活性化させているのが働く人向けの教養書だ。
現在、年間に刊行されるビジネス書は約5000点。これだけの数を前にすると、自分に適した本を選ぶのに苦労を感じる方も少なくないはず。書評サイトやブログを参考にする向きも多いだろうが、書評では、本の内容を具体的に知ることは存外難しい。そんな時にお薦めしたいのが、「bookvinegar(ブックビネガー)」。学習意欲の高いビジネスパーソンを対象としたビジネス書のキュレーションサービスだ。
bookvinegarが対象とする書籍は、新聞、ビジネス誌、著名ブログが取り上げたビジネス書。膨大な点数が刊行される昨今のビジネス書は、玉石混交状態と言ってもいい。その中から、ある程度の水準に達したものだけを紹介することで、良書のフィルタリングを行っている。
ポイントは、書評ではなく、要約(サマリー)を提供している点だ。忙しいビジネスパーソンが、短い時間で効率よく選べるインターフェイスに注力している。
書籍ごとに用意されたコンテンツは、大別すると3つ。「書籍概要」では、「超短要約」「この本を推薦しているメディア・人物」「著者略歴」「章の構成」などからなり、本の概要を知ることができる。読書の目安時間、各章ごとの重要度は★で表示。時間がない場合は、この欄を見るだけでも参考になるだろう。該当書籍が紹介されている著名ブログ、書評サイトへもリンクも貼られている。
ユニークなのは、「この本に影響を与えている書籍」を掲載している点だ。引用や参考文献として利用された本も一覧でき、横断的な読書も楽しめる。
「要約」は2、3分で読了できるボリューム。「投稿しおりメモ」は、ユーザが抜き書きや読書感想を書き込み、シェアできるようになっている。読書傾向が似ている人、メモが参考になるユーザをフォローすることも可能。SNSとしての機能も備えている。
このサービス、筆者もリリース時より活用している。気になる書籍があれば、マイページに登録しておく。自然と購入リストができるので、折を見て発注。読了後は、感想・コメントを「しおり」として付記。そうすれば、自分だけの学習ノートができあがる仕組みだ。これは、なかなか使える。
WEBのクリッピングサービスなどを活用すれば、サマリーを集めた自分だけの“一冊”を作ることもできる。通勤途上、それらをスマートフォンで読書するのも、面白いビジネスハックではないだろうか。
本というものは、積極的に読み始めると、同好の士と意見や感想を交換したくなるもの。運営にあたる株式会社ブックビネガーの坂本海氏は、毎週日曜に都内のカフェで開かれる「朝、カフェで読書会」のメンバーとしても活躍中だ。バーチャルな場だけでなく、読書を通したリアルな交流にも力を注いでいる。
仕事を離れて、オールジャンルの本を楽しみたいという方には、「inbook」も面白い。本に登場する名言やセリフを共有するサービスだ。閲覧して気になるフレーズに出会ったら、それをきっかけに本を読んでみる。そんな出会い方もできるだろう。
また、「本の書き出し」は、書籍の冒頭の一文だけを集めたキュレーションサイト。本好きの学生二人が立ち上げたちょっとユニークなサービスだが、ビジュアルが美しく、眺めているだけで楽しい。
ソーシャルリーディングという言葉を耳にするようになって久しいが、オンとオフ、両方の視点で読書を楽しみ、リアルの場でもつながっていく。その多様性が、読書体験をきっとより深くしてくれるだろう。
(吉田由紀子/5時から作家塾(R))