12月2日、米バイデン副大統領が訪日し、安倍晋三首相と会談した。「米国は東シナ海の現状を一方的に変更しようとする中国の試みを深く懸念している」と述べ、その二日後に訪中する際は、日米の共通の見解を中国政府に伝えるものと期待されていた。

習・バイデン会談や日中関係を伝える中国各紙。「美」は中国語で米国を指す Photo by Konatsu Himeda

 そして4日、バイデン副大統領は中国を訪問し習近平国家主席と会談したが、両者は防空識別圏問題については公式的な発言を控えた。中国紙は「バイデンは積極的なシグナルを送るには至らなかった」と伝えた。

 5日付けの環球時報は、トップページに両国首脳の握手シーンを掲げ、「(関係各国は)中米会談の内容を見守る」との見出しを掲げた。見出しは「防空識別圏」の「ボ」の字もなく、珍しく控えめだったが、記事は、安倍首相の目論みが水泡に帰したことを強調するものであった。

相反する小さなズレを見つけ
あの手この手でくさびを打つのが得意

 記事は伝える。

「バイデン副大統領は東京で安倍を支持するような話で日本に“想像の空間”を与えたが、今となっては安倍の声高な要求も水に流れてしまった」

 さらに記事は、バイデン副大統領にはどちらに肩入れをするのかという心理的矛盾があること、ひとたび中国に来れば、安倍首相との話を翻し、習近平主席との深い個人的なつながりで局面を打開した、などと伝えた。

「防空識別圏」はどこに行ってしまったのか。かろうじて新聞の見出しの右肩に「両国関係はすでに島嶼を超越」とサブタイトルが掲げられていたが、「防空識別圏」はあたかも二義的問題に置き換えられてしまったかのようだ。

 予定時間を1時間45分も上回る熱心な会談だったが、日米関係にくさびを打ち込むこともまた、中国側にとっての大事な仕事だったようである。米中関係の強化はすなわち、「日本を仲間はずれにする」ことを意味する。