東芝が再生可能エネルギー分野に急傾斜している。発電機器メーカーとしてではなく、自らが発電を手がけようというケースが相次ぎ、2013年に入ってすでに3件を数えているのだ。

 11月に発表したオリックスとの新会社設立で、目指すのは地熱発電。この分野では、発電機器メーカーとして、世界トップシェア(設備容量ベース)の納入実績を誇るが、岐阜県奥飛騨温泉郷で事業性を検証後、15年の発電開始を目標に出力2000キロワット規模の地熱発電所の建設を進める計画だ。東芝は資本金1億9800万円のうち55%を出資する。

 3月には太陽光発電、9月には風力発電への参入を発表済みだ。

 この一連の流れを東芝関係者は「発電事業で売上高を伸ばそうというよりは、その経験をフィードバックして本業の機器売りを拡大したいという狙いがある」と説明する。その根底には、13年6月に就任した田中久雄社長の売り上げ拡大路線がある。

 東芝の売上高は、ピーク時の07年度には7.4兆円弱まで膨らんだが、12年度は6兆円を切った。一時の危機を乗り越え、利益が出せる体質に戻った今、田中社長は「売上高の成長による規模の拡大が使命」と言ってはばからない。

東芝未開の市場を開拓

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が日本で始まったことも、東芝の再エネ発電事業参入を後押ししている
Photo by Naoyoshi Goto

 そこで打ち出したのが、自ら命名した「360度マーケティング」という手法だ。あらゆる方向へ事業化のアンテナを張って、東芝の技術が生かせそうな未開の市場を開拓し、全社挙げて規模拡大を目指すもの。東芝の各社内カンパニー社長たちは、いっせいにその宿題を課された。部品材料事業統括部では、DNA検査という既存技術を応用して農業分野への参入も果たした。

 同様に、電力システム社のカンパニー社長を務める五十嵐安治専務は、「事業の再点検を行い、今までやっていない事業領域に入るには何をすべきか考えた」と言い、その答えが、再エネの発電事業参入だったというわけだ。