軽自動車が売れなくなる
「二つの理由」

①プロダクトアウトの「ネタ切れ」

 今回の「ハスラー」記者発表会で、日本経済新聞の記者が「ハスラー商品化を決めた理由」について聞くと、鈴木氏はこう答えた。

「アルトの形から、ハイトワゴンというワゴンRへ。(弊社の軽自動車が進化していくなかで常に)実用的な分野で軽自動車を考えてきた。(そこに)遊び心がなかった、という点。(これからは商品開発として)少し道を幅広く考えて作っていきたい」

 つまりこれは、「マーケットイン」から「プロダクトアウト」への転換を意味する。

 同社の技術開発関係者と平素、意見交換をしていると「ウチは生真面目。ホンダのような遊び心が足らない」という言葉を良く聞く。

「スイフト」を中核とする乗用車、さらには二輪車の分野でスズキは、自社の開発理念を貫く「プロダクトアウト」を十分に経験している。だが、軽自動車に関しては長年に渡り「ディーラーと顧客との関係」を原点とする「マーケットイン」を意識し過ぎたのかもしれない。

ダイハツ新型「タント」搭載の排気量660ccエンジン Photo by Kenji Momota

 今後、ダイハツ、ホンダ、三菱・日産共同体から「プロダクトアウト」重視の軽自動車が続々と登場する。しかしそこには、ボディサイズが全長×全幅×全高=3400×1480×2000(mm)、エンジン排気量660ccの「軽自動車の車両規格」という大きな壁がある。軽自動車が現在のような、高品質・低燃費・低価格を実現できたのは、この「決められた枠」があったからこそ、そこで日本人特有の細部に至るまでの創意工夫が生きたからだ。そしてこうした状況は「マーケットイン」との相性が良かった。

 そこに多社・多品目による「プロダクトアウト」が加速すれば、遅かれ早かれ「商品としてのネタ切れ」、または「競争環境の激化による収益の低下」が起こる。

 さらに税制において普通乗用車との差が少なくなれば、「軽自動車でなければならない」という購買動機は薄れていく。

 2010年代中盤、軽自動車という商品が転換期を迎える可能性は高い。