「軽自動車増税は弱いものいじめだ」(鈴木修・スズキ会長)と猛反発したが、思いはかなわなかった
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 ついに、スズキの“牙城”が陥落した。12月12日、2014年度税制改正大綱がまとまり、ユーザーが年当たりに支払う軽自動車税が現在の7200円から1万0800円へ引き上げられたのだ。国内販売台数のうち軽自動車比率が9割を占めるスズキにとっては大打撃だ。

 税制議論が始まった当初より、スズキは孤立していた。先に、消費税率10%となる15年10月時点で、自動車取得税が廃止されることが決まっており、財務省と総務省はその代替財源(13年度は1900億円)を探していた。

 業界団体の日本自動車工業会は、「自動車取得税の廃止は、消費増税の影響を抑制するために撤廃されることが決まったはず。その財源を補填する議論はおかしい」と、表面的には、自動車業界がまるで一枚岩であるかのように反発した。

 だが、内実は違っていた。登録車・軽自動車比率や燃費基準の達成度などが異なる自動車メーカー各社は、自社に有利な税制となるように永田町・霞が関へロビー活動を行った。(軽自動車の規格を超える)登録車への増税を回避したいトヨタ自動車や日産自動車のみならず、目下のところ、軽自動車の販売が好調なホンダすら、軽自動車増税に異を唱えることをしなかった。ことにトヨタは、小型車メーカーに有利な「自動車取得税の基礎控除案」を回避したり、環境性能の高い車に有利な税制パッケージへ着地するよう折衝したりして、「むしろ軽自動車増税を誘導していた」(ある官庁幹部)。

 13年1~11月の国内市場に占める軽自動車比率は4割に迫る。鈴木修・スズキ会長兼社長はユーザーの支持を味方につける構えだったはずだ。だが、スズキはトヨタが親会社であるダイハツ工業と共闘することもできず、完敗した。