人口減で「立ち枯れ公共施設」が急増
野ざらしのごみ焼却施設は300ヵ所以上
人口減などに起因する様々な想定外の現象が、日本社会を覆うようになった。たとえば、荒れるに任せたままの人家の存在だ。
中山間地域に増え続ける限界集落内に止まらず、今や大都市部にまで大量の廃屋が生まれている。空き家対策は全国共通の課題の1つになっていると言ってよい。
だが、使われぬまま放置される建物はなにも民家に限らない。人口減と少子高齢化が加速する日本社会では、立ち枯れしたままの公共施設も増えつつある。綱渡りの財政運営を続けている自治体が、解体に要する経費の持ち出しを嫌い、取り壊しを先送りしがちなことも影響している。
不要となったまま解体されず、野ざらし状態となっている公共施設の中で目立つのが、ごみ焼却施設だ。環境省の調査によると、その数は全国で322ヵ所(2011年度末時点)に上る。
2005年12月時点では612もあったので、半分近く減少したが、それでも驚きの数値である。ちなみに、現在稼働中のごみ焼却施設は1211ヵ所(2011年度末時点)となっている。
廃止されながら未解体となっているごみ焼却施設が多いのには、施設特有の事情が考えられる。2002年にダイオキシンなどの排出規制が強化され、適合できない旧式のごみ焼却場の休炉が全国で相次いだ。
通常、公共施設の解体撤去費は建設費の20分の1ほどで済むと言われているが、ごみ焼却施設の解体・撤去にはダイオキシン対策などが不可欠。作業に細心の注意と時間、そして、何よりも多額の経費を要する。
「解体したくても(財政事情により)できない市町村は多い。負担が大きく、本来国が解体費を補助すべきだと思います」
こう語るのは、和歌山市一般廃棄物課の担当者。ごみ焼却施設の解体に苦慮し続けている自治体の1つである。