過去に見られなかった
5つの新しい傾向

 上記の社説からは、今回の安倍参拝が尖閣「国有化」事件のような大規模な騒擾を引き起こすことを警戒する当局の意向だけでなく、過去の日中関係緊張時とはずいぶん異なる要素が感じとれる。

■過去の反省

 2010年の漁船衝突事件時のレアアース制裁やフジタ社員の拘束、2012年の尖閣「国有化」時に騒擾事件に発展してしまった抗議デモは、いずれも行き過ぎで、国際社会の批判を招いて中国にとってマイナスだったという反省がある。

■「政経分離」方針

後述するように、中国はいまのっぴきならない経済難局に直面しており、この難局を切り抜けることが習近平政権の第一優先順位である。対日関係を全方位で冷却することが中国経済にとってもマイナスであることは明白であり、そこから「政経分離」方針が出てきそうである。

■「大国アイデンティティ」

「大国たるもの、日本の一挙手一投足で振り回されるのは、もう止めにしよう」といった問題提起は、これまでの中国に見られなかったものだ。習近平主席が掲げる「偉大な中華文明の復興(=「中国夢」)」と通底する「大国アイデンティティ」が感じ取れる。

■中国に有利な国際世論環境

安倍総理の参拝に対して、世界の論調はほぼ批判一色、そればかりか日本国内にも強い批判が生まれている。日を追う毎に明らかになってきた「中国に有利な国際世論」を味方につけることは、今回の基本的な対応方針になったとみてよい。

■権力闘争の収束

尖閣「国有化」事件の頃のように、権力闘争の最中には、執行部に「対日弱腰姿勢を見せる訳にいかない」という判断が働きやすい。しかし、いまや習近平氏が胡錦濤氏より格段に強い指導者になったことに疑いを挟む者はいない。対抗勢力が消えれば、自ずと政権の対応にも余裕が出てくる。