憲法や法令を巡る議論は
抽象論であってはならない
防衛大学校教授。1951年東京生まれ。防衛大学校卒業、フレッチャー法律外交大学院修士課程修了。ハーバード大学オリン戦略研究所客員研究員、陸上自衛隊第十一師団司令部第三部長、陸上幕僚監部防衛調整官、在米大使館防衛駐在官、陸上自衛隊航空学校副校長、陸上自衛隊研究本部総合研究部長、防衛研究所副所長、陸上自衛隊研究本部長を歴任した後、2008年12月退官(陸将)。09年4月から現職。11年3月から9月まで東日本大震災対応のため内閣官房参与(危機管理担当)。
2013年12月17日、安倍政権は「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」、及び「中期防衛力整備計画」を閣議決定した。その数日後、ある韓国メディアからの取材でこう問われた。
「『国家安全保障戦略』の中に集団的自衛権についての言及がないのは何故か。また、安倍政権は自衛権に関する憲法解釈を見直すのか――」
筆者はこれに対して、憲法や法令を巡る議論は抽象論であってはならないこと、また、この問いに対する答えにいたるまでに辿るべき議論の道筋があるということを指摘した。
すなわち、まず国家として目指すべき方向や目標を明らかにし、次にその目標達成のために採るべき具体的な施策、言い換えれば日本として何をなすべきか、また日本人として何をやりたいのかという点を議論するべきだ。その上で、それらの施策を実行するために、既存の政策や法制の枠組みを変える必要があれば、それを考えるというのが、正しい道筋ではないだろうか。