2013年にIPO(新規上場)が決まった企業は54社に上り、6年ぶりの高水準となった。アベノミクスによる円安・株高に湧く投資家の「期待」を、さらに盛り上げそうだ。世間では「再びIPOバブルがやって来た」という声も聞こえる。市場の活性化は歓迎すべきだが、投資家にとって行き過ぎたIPOブームに乗ることにはリスクも伴う。今は本当に「IPOバブル」なのか。市場関係者は現状をどう観察し、投資行動を考えるべきか。世界と日本の資本市場に精通する大崎貞和・野村総合研究所 未来創発センター主席研究員が、2014年の株式市場とIPOブームの行方を解説する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

2013年のIPOは6年ぶりの高水準
「バブル再来」の声は本当なのか?

おおさき・さだかず
野村総合研究所未来創発センター主席研究員。東京大学大学院法学政治学研究科客員教授、早稲田大学大学院商学研究科客員教授。1963年生まれ。兵庫県出身。東京大学法学部卒。86年野村総合研究所入社。90年ロンドン大学法学大学院、91年エディンバラ大学ヨーロッパ研究所にて法学修士号を取得。『解説金融商品取引法』『金融構造改革の誤算』『株式市場間戦争』『ゼミナール金融商品取引法』(共著)など著書多数。

――2013年にIPO(新規上場)が決まった企業は54社に上りました。新規上場数は4年連続で前年実績を上回り、特に2013年は6年ぶりの高水準となっています。現状をどう評価しますか。

 ここ数年間でのIPO件数のボトムは2009年でした。新規上場企業数は2011年頃から少し戻り始め、13年頃から本格的に増え出したという印象です。件数だけでなく中身についても、株式市場で投資家の期待が高まり、実力のある新規銘柄が出て来たことは評価しています。

――アベノミクスの金融政策で円安が定着し、株式相場が上向いた影響は大きいでしょうね。足もとでは、市場の活況に伴い「再びIPOバブルがやって来たのではないか」という声も聞こえて来ます。

 もちろん景気や株式市場の動向は、IPOを目指す経営者のマインドを大きく左右します。ただ日本の場合、IPOの主たる場は新興市場(マザーズ、JASDAQ)なので、日経平均の動きだけでは語れない側面もあります。

 それに、通常企業はIPOまでに3年ほどの準備期間を要します。アベノミクス以降に新規上場した企業は、実は2010~2011年など、IPOが落ち込んでいた時期から準備を進めていたものが多いと見られ、足もとでそれが一気に表に出てきたという見方もできます。