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5つのポイントで占う2014年

消費税アップに間に合わない
情報システムが多発する!?
――国立情報学研究所・佐藤一郎教授

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第12回】 2014年1月27日
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③ビッグデータとパーソナルデータの板挟み

 昨夏、JR東日本が乗車履歴を第三者の企業に販売しようとしたことが、個人情報の観点から問題となった。ビッグデータの対象は必ずしも、個人情報ではないが、残念ながら他者に売れる情報となると個人情報となってしまうのが現実であろう。個人情報の第三者提供に加えて、企業の統合や買収も増えており、買収や売却にともなう個人情報の取り扱いは、今後、大きく社会問題化することも予測される。

 こうした状況を受けて、政府はビッグデータを前提にしたパーソナルデータの枠組みを模索しており、個人情報保護法の改正を念頭に、昨年9月から12月に内閣官房の「パーソナルデータに関する検討会」が開かれた。著者自身も同検討会委員及び技術検討ワーキング主査として関わった。

 さて、同検討会では個人情報保護法の改正に関わる方向性が議論され、二つの見直し方針が示された。一つは個人情報の第三者提供において、情報の提供を受けた先で個人を特定しないことを前提とする新しい枠組みの設定である。もう一つが個人情報の取り扱いに関し、立ち入り調査権をもつ第三者機関を設けることである。

 現行の個人情報保護法については、2015年の通常国会での抜本改正を目指して、2014年は改正に関わる議論が進む。現行法と同様に法案作りは様々な意見が出されると予想され、社会的にも大きな関心が集まるであろう。

④SI業界の疲弊の深刻化

 SI業界は昨年度、大手ですら、赤字決算を出すところがいくつかあり、今年度に入ってからも、赤字システム開発案件が取りざたされるSI企業がいくつかあった。中小SI事業者はもっとたいへんであろう。

 SI企業はもっともらしい理由をいろいろつけるが、製造業や不動産業で設備や物件の稼働率が下がることを避けるために、採算割れの仕事を請けることや、テナントを入れるのと同じ構図であろう。

 ユーザ企業のシステム更新間隔が延び、さらに銀行業界に代表されるように企業統合が進むとシステム開発案件数は減っていく。システム開発案件が減れば、仕事がない技術者が出てきてしまう。技術者を遊ばしておくよりは、安価でもいいので案件をとりにいくことになり、結果として起きるのは赤字の積み増しである。

 このとき注意すべきなのは、2007年の会計基準の変更の影響だ。この変更で、システム受託開発案件は、ビルなどの施工と同様に工事進行基準で会計処理ができるようになった。そのため、その開発案件が仮に赤字になると、過去に遡って決算の修正を迫られることになる。これは株主にとっては迷惑な話だし、融資元の銀行にとって、SI事業者への融資は難しいということになっていく。

 ところで、SI業界の疲弊に関わる問題は国内のIT業界の本質的な問題を垣間見せる。本来、システム開発は、その開発フェーズによって必要となる人員数も、その人員に求められる技術も違う。一方で日本のように解雇が難しい国では、ユーザ企業が自社でシステム開発に必要な要員を必要なときだけ雇うのは難しい。その問題を解決していたのが、SI業界である。

 SI業界の疲弊は最終的にはユーザ企業に跳ね返っていく。今後、ユーザ企業はシステム更新をしたくても、その更新を請けてくれるSI事業者がいないという事態も想定されるわけで、内製化を含めてSI業界に頼らない方策もそろそろ視野に入れるべきであろう。

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佐藤一郎
[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。

5つのポイントで占う2014年

4月に消費税増税を控え、中国・韓国とは緊張状態を維持したなかスタートする2014年。世界は、日本はいったいどのような変革に見舞われるのだろうか。企業経営者、識者の方々にアンケート方式で、2014年を占うポイントを5つ、挙げてもらった。

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