「アベノミクス」によって、わが国経済に関するセンチメントは明るい方向に変化しつつある一方で、その解決に国民の「痛み」を伴う構造問題への取り組みは軒並み遅れている。その最たるものが財政問題だ。すでに、国際機関はGDPの10%にも相当する財政緊縮が必要だと診断しているにもかかわらず、財政運営はいまだ拡張路線を採っているように見える。本稿では2回にわたって財政の現状を分析し、財政再建の選択肢を提示する。
日本総合研究所調査部主任研究員。1988年京都大学法学部卒。日本銀行勤務を経て、現職。専門は金融、財政、公共政策。これまでの執筆論文・レポート等は参照。公職:財務省国税審議会委員、厚生労働省社会保障審議会委員、内閣官房行革推進会議歳出改革WG構成員、同独立行政法人改革等に関する分科会構成員ほか。
「バブル」の崩壊は
ほとんど突然発生する
安倍晋三政権の「アベノミクス」が2年目に入った。足許のわが国経済に関するセンチメントは明るい方向に変化しつつある一方で、わが国がかねてより抱えている構造問題、換言すれば、現世代の国民の「痛み」を伴わずして解決へは向かい得ない諸問題に対する腰を据えた取り組みは、軒並み遅れているように見受けられる。
その最たるものが財政問題であろう。
この国の財政運営は、昨年末に発表された平成26(2014)年度予算政府原案からも明らかなように、来たる4月に消費税率を8%に引き上げるだけで、それ以外の面では、財政再建に向けて舵を切るどころか、まだまだ拡張路線を続けるつもりであるかのようにみえる。先進国として過去例をみない規模の政府債務残高を抱えている(図表1)にもかかわらず、である。
確かに、もうしばらくの間は、このままでも大丈夫なのかもしれない。しかしながら、足許の歴史的低金利、いわば「国債バブル」の状態を頼りにした財政運営を、永遠に続けていくことができないことは、国内外の歴史が雄弁に物語っている。