ニューヨーク市立大学のフリースペース。ニュースを流すモニターが並ぶ

「新境地を開拓する(break new ground)」――こう掲げるアメリカのニューヨーク市立大学(CUNY)ジャーナリズム大学院には、データジャーナリズムを教える「データドリブン インタラクティブジャーナリズム」の授業がある。データ分析やビジュアライゼーションといった新しい技術を通して、大量のデータからどうストーリーを見つけ、読者を惹きつける形にするのかを実践的に指導するのが特徴だ。ジャーナリズムが直面する、テクノロジーの変化という潮流。乗り遅れまいと、伝統校が競うように、ジャーナリズムとテクノロジーを結びつけた実践教育を始めている。(取材・文・撮影/日本ジャーナリスト教育センター)

一等地で学べる環境を提供するCUNY

 ビル群が立ち並ぶ一等地・ニューヨーク市マンハッタンのタイムズスクエアに、CUNYの大学院はある。隣接するのは、ニューヨーク・タイムズ。近代的なビル内に足を踏み入れると、自由に使えるスペースに設置された、大小7つのディスプレイが目をひいた。常時ニュースに触れられるようにとCNNテレビなどが流されている。学生たちはほぼ全員、ノートパソコンを持参し、作業している。同じフロアには、テレビやラジオ放送が実地体験できるスタジオがあり、実践的な環境が整う。大学というより、メディア企業を連想させる。「働きながら通う人が多い」。同校のアマンダ・ヒックマン氏が案内してくれた。

 ヒックマン氏は「データドリブン インタラクティブジャーナリズム」のデータビジュアライゼーションを担当する。「データドリブン インタラクティブジャーナリズム」で学ぶのは、データを集め、分析し、ビジュアライズするスキル。マッピング、グラフ化、アニメーションツール、分析術など多岐にわたる。ヒックマン氏は「新分野の開拓や、ジャーナリズムの文脈でクリエイティビティを育てることについて、強みがある。生徒の反応もいい」と話す。

 アメリカで最も歴史ある公立大学の一つで、「起業家ジャーナリズム(Entrepreneurial Journalism)」を掲げることでも知られるCUNY。ほかにも、報道や分析記事を生み出すソーシャルメディア活用を学ぶ授業や、ニュースゲームやクイズなどを使い、読者にわかりやすく伝える新しい手法を考えるユニークな授業「ゲーム&クイズ(games & quizzes)」がある。ニューヨーク・タイムズからも講師を招いている。最先端のカリキュラム、実践的なプログラム、著名な講師陣などが売りだ。