春の新生活シーズンは携帯電話の最大の商戦が繰り広げられる。通信キャリアは移り気な契約者の動向に、さぞや気を揉んでいるところだろう。通信事業者向けシステムの提供で世界的なリーダー企業であるアムドックスによると、既存のスマートフォンユーザーのほとんどは、契約しているキャリアのサービスに不満を持ち、乗り換えを考えていないユーザーはわずか14%に過ぎないという。同社が都内で開催したプレス向けセミナーにおいて、通信キャリアの競争環境の変化と日本市場の位置づけについて説明するなかで明らかにした。(取材・文・撮影/ダイヤモンド・オンライン編集部 魚谷武志)
誰もが今契約している通信事業者を好きではない
アムドックスは、32年前にイスラエルで電話帳の会社として創業した。その後通信事業者向けの運用管理やCRM事業に進出、現在では、顧客サポートや請求管理システムとトラフィック管理など通信システムの運用管理業務を統合させた先進的なソフトウェアをグローバルに展開している。全世界の主要な通信事業者を顧客に持ち、のべ契約ユーザー数は30億件以上に及ぶという。ソフトバンクの傘下に入ったスプリント・ネクステルも主要な顧客企業の一社だ。
通信事業者間の激しい顧客争奪戦はグローバルレベルでも同様だ。携帯電話のユーザーは移り気で、世界中のキャリア各社は解約防止に頭を悩ませている。そうした市場において同社が提供するカスタマーサポートなどの顧客対応のソリューションは、30億以上ものユーザーケースをもとに、ユーザー個々に最適にパーソナライズされたサービスの提供を可能にすることを強みとしている。
アムドックス
顧客管理・マーケティング担当ディレクター
Photo: DOL
同社の顧客管理・マーケティング担当ディレクター、ロニット・ドーラン氏は、「モバイル通信に特徴的なのが、顧客ロイヤリティがきわめて低いことです」という。「調査会社のコールマン・パークスが全世界のスマートフォンユーザー4000人を対象にした調査を行ったところ、顧客ロイヤリティを示す最重要な指標であるNPS(ネットプロモータースコア:正味推奨率)はマイナス3.2%と、誰もが今契約している通信事業者を好きではない、という残念な結果でした」
NPSとは、「対象(ブランドやサービス)を周囲に推奨するか」という質問に対して、ポジティブな回答をした比率からネガティブな回答をした比率を引いたもの。数値としては、100~-100%を取りうる。30~50%あれば、比較的良好な顧客ロイヤリティがあるといえる。この数値がマイナスになるということはつまり、おしなべてスマホユーザーは契約しているキャリアに不満を抱えているという実態をあらわしている。