中国共産党にとって
日本との関係は“生命線”
「我が党は日本との関係をめぐる歴史教育を見なおさなければならない。さもないと、統治にとって不都合な状況が生じてしまうだろう。実際に、抗日戦争をどう書き綴るかという問題は、党上層部で真剣に議論されてきた」
4年前の春節、中国国内で旧正月の年越しをしていた私は、中央と地方双方で共産党体制における重役を歴任した人物と向き合っていた。テーマは自然に日中関係に及び、私が中国の歴史教育における日本ファクターに関して質問をすると、その人物は深刻な表情で上記のような主張を返してきた。
“不都合な状況”とは何を指すか。
さまざまな解釈があるだろうし、時代や環境の変化に伴い、その状況も変化していくに違いない。少なくとも言えることは、約65年間中華人民共和国の“第一党”に君臨し続けた中国共産党にとって、「日本をどう位置づけ、人民に語り継ぐか」という問題は、歴史教育や対外交流という範疇を超えて、自らの生命線にまで影響を与え得るイシューであるということだ。
実際、2005年や2012年に中国各地でドミノ式に発生した“反日デモ”は、(その背後に複雑に存在する共産党内の権力闘争や政商関係をめぐる利害関係はさておき)治安管理や社会秩序を含め、本連載でも連続的に扱ってきた“安定”という中国共産党が目下最重要視するファクターを脅かす不安定要素であったことは疑う余地がない。
“反日デモ”がトリガーとなって社会が不安定化したり、日本だけでなく、欧米を含めた海外からの投資家やビジネスマンが“引いて”しまったりするリスクも内包している。その意味で、日本との関係が党指導部で往々にして“生命線”をめぐる議論に発展するのは自然なことであり、かつ必然性を伴っている。