褒めるとは「価値観」を伝えること
人を育てる時に一番大切なのは「褒めること」です。たとえば、部下が仕上げてきた仕事が自分の理想からほど遠いものであっても、片目をつぶりましょう。自分が求めている方向に一番近い部分を、まずは褒めてやる。
それを繰り返していくと、最初は5割くらいの出来だったものが5割5分になり、最終的には7~8割くらいの出来になっていきます。
褒める時に気をつけたいのは、具体的に褒めること。ただ「いいね」「やるじゃん」と言うだけではダメ。なぜなら、褒めるとは、価値観を伝えることだからです。
具体的に褒めることで、相手に「こちらの方向で合っているよ」「その部分を伸ばせばいいんだよ」というメッセージが伝わるのです。つまり、教える側と教えられる側で一つの価値観が共有される。逆に価値観が共有されていない状態では、育てられる側は何をどうしていいのかわかりません。
また、否定では価値観が伝わりません。「これじゃ、ダメ」と言われたところで、次にどうすればいいのかわからないのです。たとえば、上司に何か提案をして「これじゃ、ダメ」と言われても、部下は次にどうしていいのかわからないでしょう。「じゃあ、どうすればいいんだよ……」と心のなかでつぶやきながら、やる気をなくしてしまいます。
褒めて気分よくさせてあげれば、たいがいの人は現状の上を行くようになります。人には誰でも「こういうふうにしたい」という方向性があるものです。本人が望んでいるのだから、褒めて褒めて、その方向に伸ばしてやるのが一番いいに決まっているのです。
人を育てるのには、長い時間がかかります。でも、褒め続ければ必ず伸びる。それが私の実感です。
この連載は、今回が最終回です。ご愛読、ありがとうございました。
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