前々回(2月20日)から始まった全5回連載では、『自信は「この瞬間」に生まれる』を刊行され、ハーバードで「ベストティーチャー」に選ばれ続けた日本人教授、柳沢幸雄さんに「自信」の秘密を教えていただきます。
今回は、自信が揺らぎがちな「不遇の時期」について。何をやってもうまくいかない、誰も認めてくれない……そういう時期は誰にでもあるもの。苦しい時、自信を失ってしまいそうな時を、どのようにうまく乗り切るか。そのコツを柳沢先生に教えていただきます。
人生の「立ち上がり」の時期をどう過ごすか
人生には、選べるものと選べないものがあります。
やりたい仕事は選べても、上司は選べない。学校は選べても、教師は選べない。さらに言うなら、親を選ぶことは不可能です。その時の状況や環境に恵まれるか、恵まれないかは運であり、誰にもわかりません。
特に20代、30代は自分の力で変えられる範囲も狭くて、理不尽な思いをすることも多いはず。第1回目で紹介した成長曲線でいえば、S字カーブが立ち上がる以前に当たります。
自信が揺らぎがちな、人生の立ち上がり地点までをどうすごすか。第1回でご紹介した「S字カーブ」は、人生のキャリアパスにもあてはまるのです。「伸び」が実感できるようになるまでが、勝負です。
たとえば、不運にも、相性の悪い上司に当たってしまったらどうするか。自分はツイていないとひたすら嘆き、うっぷん晴らしに悪口を言っては飲み屋でクダを巻く。よくある光景ですが、これではまわりが迷惑だし、自分にとってプラスにならない。
何より、かけがえのない人生の時間を不満と愚痴でムダにするのは、あまりにもったいないと思います。上司との軋轢にストレスを抱えながらイライラしてすごすより、この不利なシチュエーションをどうしたら「自分の糧」にできるかを考える。そのほうがよほど合理的だし、時間の使いかたとしても有意義です。
今回は人生の「立ち上がり」までの期間の、上手な過ごしかたについて書いていこうと思います。
東京大学名誉教授。開成中学校・高等学校校長。シックハウス症候群、化学物質過敏症に関する研究の世界的第一人者として知られる。1947年、疎開先・千葉県市川市の母の実家で出生。1971年、東京大学工学部化学工学科を卒業後、日本ユニバック株式会社にシステムエンジニアとして勤務し、激務のかたわら、週15時間英語の勉強に打ち込む。1974年、水俣病患者を写したユージン・スミスの写真に衝撃を受け、化学工学を勉強すべく、東京大学大学院工学系研究科の修士課程・博士課程に進学。この頃、弟と一緒に学習塾の経営を始める。東京大学工学部化学科の助手を経て、1984年にハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の研究員の職を得て、家族を連れ渡米。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の助教授、准教授、併任教授として空気汚染の健康影響に関する教育と研究に従事、学生による採点をもとに選出される「ベストティーチャー」に数回選ばれる。1999年、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻教授に就任。2011年より現職。