私が新米上司だった頃

 たとえば、部下がなかなか思い通りに仕事を仕上げてこない時。イライラして、つい「自分でやったほうが早い」と手を出してしまいたくなります。でも、これは厳禁。ただでさえ忙しい自分の首を絞めるようなものですし、部下も育ちません。

 とはいえ、私自身はなかなか部下に任せられない上司でした。

 40代になり、ハーバードの研究室でマネジャーをしていた頃。実験に手が回らなくなり男性スタッフを1名雇い入れました。ところが、彼の出してくる実験結果と私の想定した分析結果が食い違う。

「さては、あいつ実験を間違えたな……」と疑いを持った私は、週末に実験室に忍び込み確認するようになりました。やがて、それに気づいた彼は烈火のごとく怒りました。「ユキオ! なぜ、僕のやることを信じないんだ!?」

 この時、私は初めて、人を束ねるマネジャーとして部下を育てることを真剣に考えるようになりました。