「みんな、聞いた? この人怖い」
労働条件がいいのに社員が辞めていく

 書籍編集部には、正社員の編集者が10人近くいる。平均年齢は、20代後半。派遣社員が数人加わる。他の大手出版社と比べても、体制は見劣りしない。

 だが、正社員の離職率は高い。特にこの編集部は、数年で10人のうち3~4人が辞めていく状況が続く。残業が極端に多いわけでなく、賃金が低いのでもない。むしろ、労働条件は業界では恵まれている。辞めていく大きな理由の1つには、女性副編集長の存在がある。

「ひとり芝居」で当たり散らされることに嫌気がさして、退職するケースが目立つ。そのことを、上司である編集長(部長待遇)はとがめない。人事部は機能しておらず、社内で問題視されることはない。

「ひとり芝居」をするだけならば、まだいいのかもしれない。この副編集長は、自分が担当する仕事だけでなく、部下である6~7人の編集者たちのあらゆる仕事に介入をする。(②)

 しかしその指示が、編集者らを苦しめる。編集者らには、指示の内容やタイミングが要領を得ていないように見える。彼女の指示に従うと、まず上手くはいかないのだという。

だが彼女は、自分と同じ土俵に上がろうとする者を決して許さない。執拗に押さえつけようとする。(③)部下が指示について聞き返すだけで、次々と言い返す。

「だから、何度も言ったじゃない!」「やっぱり、聞いていなかったのね」「あなたの言っている意味がわからない」……。

 ここでも、「ひとり芝居」を行う。周囲に尋ねるように話す。

「(その編集者の反論を)聞いた? 意味がわかる? わかんないよね」