「心のケア」にも私学の壁
相談する先がどこにもない遺族たち

日和幼稚園訴訟を生んだ「私学」の壁 <br />園児遺族が遭った3年間の“たらい回し”休園中の日和幼稚園前から撮影。園庭側の門からは海が見える
Photo by Y.K.

 前出の佐藤さんは、遺族として関係機関の事後対応から、私学での学校防災や事件・事故の様々な課題が見えてきたという。

「私たち遺族の話を聞いてくれるところはなかったわけで、県の対応も、正直なところ、『相談を聞いてくれた』という感じではなかった。

 こういう事故が起きたら、すぐにでも調査委員会を立ち上げるべきだと思うんですね。学校法人側の都合で調査が放置されてしまうことを、予防する必要があります。いずれはそのために、関係機関に働きかけていきたいと思っています」

 佐藤さんにはいま、もうひとつ心配なことがある。心のケアにも「私学の壁」が存在していることだ。

「私たち親は、事故や裁判についての打ち合わせや話し合いをしなければならない機会も多く、そのたびに愛梨の妹が、“お姉ちゃんのためだから”と、我慢をしてくれています。でもそんな日の翌日は、反動で私から離れないようになってしまって……。親の私たちもケアが必要ですが、兄弟姉妹への遺族ケアや支援もとても必要としています。でも、相談する先がどこにもないんです」

 石巻市では、この4月から、市立学校の在籍中に子どもを亡くした遺族を対象にした、「石巻市震災心のサポート事業」がスタートする。石巻市教委が、県教委の協力で実施するもので、市教委内に新規の部署を設置し、専門の相談士や臨床心理士らを常駐させる。

 しかし、石巻市の市報3月1日号に掲載された同事業の告知には、<対象は東日本大震災当時市立幼稚園・小学校・中学校および市立高等学校に在籍し、被災により亡くなられた(または行方不明になられた)お子さんのご遺族です>と書いてあり、私立や県立学校の遺族・家族は対象とされていないことがわかる。

「私たち遺族は、これまでも、幼稚園や行政がやった心のケアの対象者ではなかったんです。こういう状況が放置されていることも、いったい誰に言えばいいのか……やっぱり蚊帳の外なんですよね」

 佐藤さんは、そうため息をもらす。

 筆者が県教委の同事業の担当者に問い合わせてみたところ、私立や県立学校の遺族を対象とするかどうかは、「内々では検討中」だという。しかし、現状のスケジュールでは市立学校の遺族が優先だ。今後、私学の遺族をどう対象者として特定して接触するかについては、「まだわからない」とのことだった。