西城江津子さんの夫で、春音ちゃんの父親の靖之さんは、こう話す。

「私学で子どもを失った遺族が、事故の真相を知らせてもらえず、自ら調べなくてはいけなくなるのはおかしいと思います。遺族として相談する窓口もなくて、たらい回しされました。こうした、私たちが直面した実態を、少しでも知ってもらいたいと思っている」

 あの日からの3年、遺族として真剣に学校管理下の安全態勢を突き詰めるなかで、取り組むべき課題をたくさん見つけた。どこから手をつけて良いかわからないくらいだが、教育現場に問いかけたり、課題解決に向けて行政に働きかけたりすることを考えていきたいという。

 今の遺族を支えるのは、「誰にも同じような悲しい思いをしてほしくない。災害が起きてしまっても、遺族には同じような苦労を味わってもらいたくない」という強い思いだ。

日和幼稚園訴訟を生んだ「私学」の壁 <br />園児遺族が遭った3年間の“たらい回し”被災したバスは、日和山への坂に差し掛かった辺り(光が途切れている付近)の瓦礫の下からみつかった
Photo by Y.K.

「悔しいよな」

 日和幼稚園の被災した園バスの発見場所は、園から歩いて数分の場所にある。夕日が傾く頃、筆者が門脇町の現場で手を合わせていると、自転車で坂を上ってきた初老の男性が立ち止まった。

「孫が日和幼稚園に通っていて、大きいほうのバスに乗っていて助かったんだ。(被災した)小さいバスは、なんですぐに日和山に上がらなかったんだろうな」

 男性は、ポケットから発災後まもない頃の、バスが見つかった現場付近の写真と、日和幼稚園の園バス訴訟を報じた地元紙の切り抜きを取り出し、見せてくれた。

 どうしても他人事に思えず、悲しい出来事を繰り返してほしくないと、人に説明するためにいつも写真や資料を持ち歩いているという。

「悔しいよな」

 男性がそう言い残して立ち去ると、辺りはすっかり暗くなった。事故現場の向かい側にある自動販売機の灯りが、献花を青白く照らし出した。

(加藤順子)

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