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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

クレジットカードに39%の金利をつける米銀の悪徳商法

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第22回】 2009年8月31日
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報酬規制を免れるための
対抗措置に動く銀行側

 多くの消費者はクレジットカードの重圧に喘いでいる。7月に失業者数は24万人減少したが、小売業の売上は減少した。消費者が財布の紐をしっかりと締めているのは、消費を拡大する気持ちになれないからだろう。消費ができないどころか、カードローンを支払えずに破産する人が急速に増えている。今年1-3月の個人破産者は33万人と前年比33%も増加し、4-5月でも更に25万人が破産申請をしている。

 こうした庶民の苦しみとは裏腹に、大銀行の幹部は億単位の収入を得ている。今年2月にオバマ大統領は、公的資金で救済を受けた銀行幹部の報酬は50万ドル(5000万円)を上限とする規制を設けた。業績の悪いシティバンクとバンク・オブ・アメリカは公的資金を返済できずにいるが、業績が比較的良いJPモルガンチェースとアメリカンエクスプレスは公的資金を返済した。これは報酬規制を免れるためと言われる。

 銀行を含めた大企業幹部の給料を規制する議会の動きはあるが、多くの庶民を泣かせた大銀行はこれを逃れるべく様々な対抗措置を取るのではないかと噂されている。オバマ政権がどこまで実効性のある規制を導入できるのか楽観は許されない。

 巨大な支配力を持つ金融機関を野放しにするとどうなるのか。一部の巨大金融機関が自由に金融商品をコントロールできるようになるのに対し、利用者にはこれを拒絶する対抗手段がなくなる。借入を安易に増やした利用者側にも責任があるが、弱者である利用者はトコトン金融機関に収奪され、強者である金融機関はトコトン金儲けする。

 金融機関が利用者を収奪できなくするルールを作らないと、「社会的正義」と「倫理」がなくなってしまう。欧州と日本ではこういうルールの導入は素直に受け入れられる。だが、この国は違う。規制を導入すると「活力」と「創造性」が失われてしまい、アメリカ経済の競争力が失われると反論する。「自由」と「貪欲さ」が「活力」と「創造性」の源泉であると主張する。

 これがアメリカの「気質」である。何故そうなったのか? この国は欧州で食いはぐれた下層市民が大量移民して作った国である。もちろん一部に例外はあるが。そこには欧州のような「ノブレス・オブリジェ(高貴な人の義務)」といった理念はないし、責任感もない。「貪欲さ」と「浅ましさ」を「恥」と感じる奥ゆかしい文化もない。

 オバマ政権が行っている金融改革は、アメリカ資本主義に「社会的正義」と「倫理」を尊重するルールを導入する改革であるように思う。米国金融機関の影響力はグローバルに大きいだけに、放置すれば今回のような金融危機がまた起きて、世界が再びアメリカの「自由主義」に振り回されかねない。オバマ大統領の改革努力を静かに見守りたい。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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