中国の銅は電線などのインフラ需要が多い。政府が成長率目標を維持する限りは、一定の需要はあるはずだ
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 新たな「チャイナリスク」が顕在化した。中国の銅価格の急落が、世界の市場に不安をもたらしているのだ。

 3月5日からの1週間で、上海先物取引所の銅価格は10%下落。これが中国での需要減退、すなわち景気の減速を示すものとして市場の警戒感をあおり、12日には世界の株価下落の一因ともなった。

 中国の景気減速は事実だ。1~2月の製造業PMI(購買担当者景気指数)、鉱工業生産などの指標は市場予想を下回り続けている。

 しかし問題は、別の面にある。実は、中国の銅輸入の半分ともいわれる部分を、投機目的が占めているのである。

 方法はさまざまだが、基本は以下のような形だ。銀行から米ドル資金を調達し、銅を輸入する。信用状を用いた輸入では支払いまでに6カ月程度の猶予期間があるため、この間に、得た資金を元に人民元で運用し、銅の売却代金は人民元で受け取る。米ドルと人民元の金利差で利ざやを稼げるだけでなく、売却までの間に理財商品や社債などで運用するケースもあるとみられている。

 ところが1月、理財商品のデフォルト(債務不履行)が懸念される事態となり、3月7日には中国で初の社債デフォルトが発生。さらに政府もこれを容認する姿勢を示した。業者やそれらに資金を供給する銀行に一気に不安が広がり、担保の銅があわてて売られて銅価格が下落、さらに売りが加速したという構図である。