先進国を中心に、世界景気は回復を続けているが、そのモメンタムは力強さを欠いており、足元では、新興国経済への不安が再び強まっている。国際商品の市況を見ると、中国景気への期待感を反映しやすい鉄鉱石や石炭の市況が1月に入って下落基調で推移している。
一方で、インドネシア政府による鉱石の輸出禁止措置の影響が大きいニッケル、南アフリカ共和国でのストライキが波及しやすいプラチナ、寒波到来によって需給が引き締まっている米国の天然ガスなど、個別の要因がある品目の市況は上昇している。
そうした中で、国際商品市況の中心的存在である原油と金については、上値・下値が限定された動きになっている。
この1カ月余り、原油と金の値動きが逆相関、反対の値動きをする傾向を強めている。
原油は、クリスマスごろに高値をつけた後、年明け以降は下落している。金は、12月18日に米国で量的緩和の縮小(テーパリング)開始が決定されて以降、大幅に下落していたが、年明け以降は値を戻している。
一見、景気拡大観測に伴って原油需要の増加観測が強まる局面では原油価格は上昇するが、景気拡大観測を背景に量的緩和の縮小観測が強まる局面では金は売られる、といった正反対の値動きをする説明が成り立つように思える。
しかし、もう少し期間を長く取ってみると、むしろ原油と金の最近の値動きは似ている。夏場には、エジプトやシリアの地政学要因によって原油が高止まりしたものの、それを除くと、原油と金の騰落のタイミングはよく似ている。背景には、FRB(米連邦準備制度理事会)による量的緩和の縮小観測の影響を受けた動きが両者に共通していたためである。