D・コーンFRB副議長は、事前の観測どおり、6月23日の任期満了時に退任することになった。オバマ大統領に同氏が辞意を伝えた3月1日の書簡に次の文章があった。
「私は、FRBが、バーナンキ議長のリーダーシップの下、迅速性、想像力、有効性を強く持ちながら困難に立ち向かったことを歴史が評価すると確信している」。
現在のFRBがいかに世論、議会から激しく批判されているかが理解できる一文である。リーマンショック後のパニックを沈静化させるため、FRBは一時、資産を平時の2.5倍に急膨張させて、ウォール街に巨額の資金供給を行った。
それに対し米国民の多くは「FRBは納税者負担が生じる恐れがありながら、ウォール街を救済した」と憤慨している。先日の米国出張で聞いた話では、ワシントンを巡回する観光バスがFRBの前に止まると、米国人観光客はブーイングを発するのだという。
そういった空気を敏感に感じ取った議員たちは、バーナンキ議長の再任に難色を示し、再任承認投票において過去最大の反対票が投じられた。
リッチモンド連銀のラッカー総裁は3月1日に「国民はわれわれに怒りを覚えている」と認めつつ、FRBが「スケープゴートにされている」と悲鳴を上げていた(ブルームバーグ)。