アマゾン・ウェブ・サービス(以下、AWS)やグーグルのクラウドサービスの値下げ発表により、クラウドサービスの市場競争は激しさを増している。AWSと競合する各社の取り組みを紹介し、今後のクラウドサービス市場の展望について解説する。

パブリッククラウドサービスの
支配的リーダー、AWS

 パブリッククラウドサービス市場では、AWSのクラウドサービスがマーケットリーダーとして圧倒的なシェアを誇り市場を牽引している。

 米調査会社のシナジーリサーチグループが2014年2月3日に発表した「Amazon Continues to Dominate IaaS/PaaS Despite Strong Push from Microsoft & IBM」では、AWSの2013年第4四半期のパブリッククラウドサービスのIaaS/PaaS市場のマーケットシェアは30%を超え、「市場の支配的なリーダーである」としている。

 米調査会社のガートナーが2013年8月21日に発表したパブリッククラウドサービス事業者を対象とする調査リポート「The 2013 Cloud IaaS Magic Quadrant」でも、AWSは群を抜く「リーダー」のポジションに位置付けられている。

 AWSは、2014年3月27日に開催したイベント「AWS Summit」で、仮想サーバーのEC2やストレージのS3などの主力サービスで大幅な値下げを発表したが、これまでに42回にもおよぶ価格の値下げを実施している。顧客からのフィードバックによる機能向上や新サービスの提供と規模の拡大による持続的なイノベーションを生み出している。

 AWSが、競争優位にたっているのは、サービスの優位性だけでなく、パートナー企業との連携によるクラウドエコシステムの展開力が大きな強みとなっている。

 自社のサービスの機能拡充や新サービスの提供を図るとともに、AWSのクラウドサービスとパートナーが連携可能なAPIを提供することで、多種多様のサードパーティを取り込み、独自のクラウドエコシステムを強力に展開している。

 日本国内では、40以上の全国各地に拡大するAWSのユーザーコミュニティ「AWS User Group Japan(略称JAWS-UG)」によるコミュニティの拡大により、ユーザーのすそ野を広げている。

 さらに、ビジネスパートナー企業となるAWSソリューションプロバイダーの拡大も図り、野村総研や日立製作所、電通国際情報サービスなどの大手SI事業者などが参加し、すでに、200前後の事業者がパートナーとして参加している。

 AWSでは、国内の顧客数が2万社を超えたことを明らかにしており、これらのエコシステムの展開力が、顧客の利用拡大につながっている。

 2013年11月からは、企業向けユーザー会「Enterprise Japan AWS User Group(E-JAWS)」を発足し、三井物産、積水化学工業、東急ハンズなど40社を超える企業の情報システム部門の責任者が参加している。

 ユーザー会では、各社の情報共有などを行う機会を提供し、企業顧客の囲い込みを図るなど、企業の基幹システムのクラウド基盤への展開にも力を入れ始めている。これまでは、ウェブ系のサービスの開発や運用、あるいは企業システムのテスト環境として活用され成長してきたが、今後は、エンタープライズクラウドの市場が大きな主戦場になっていくと予想される。