クラウドコンピューティングは、一時はバズワード扱いされておりましたが、いまや企業の基幹システムにパブリッククラウドを利用する事例も出ているなど、普及が進んでいます。それとともにクラウドコンピューティングの位置付けや使い方も大きく変化しています。そこで今回はInfrastructure as codeを中心に、いまどきのクラウドコンピューティングの技術トレンドについて書きます。なお、やや技術的ですが、クラウドコンピューティングはもちろん、今後のコンピュータを考える上では重要な話題であり、お読み頂ければ幸いです。なお、以降ではクラウドコンピューティングをクラウドと略します。また、対象はパブリッククラウドとしています。

クラウドの実情

 クラウド黎明期、クラウドのメリットとして強調されたのは次の二つでした。

 (1)必要なときに必要なだけサーバが使える
 (2)情報システムの所有から利用へ

 当時、(1)の事例として頻繁にあげられたのが、米ニューヨークタイムズ社が、パブリッククラウドの代表格であるAmazon EC2のサーバを大量に使って、過去100年分の新聞記事データのPDF化処理を1日で終わらせたという話でした。古い記事のPDF化は一過性の処理でしょうから、そのためにシステムを用意するのは無駄であり、クラウドを有効に利用した事例となります。

 しかし、昨今のクラウドの利用事例をみると、一過性の処理はむしろ少数で、基幹系など日々使い続けるような情報システムをクラウドに移行する事例が多いのです。

 (2)で強調されたのは、情報システムを365日24時間、稼働させるわけではないので、自前で持つよりは借りた方が安上がりという話でした。しかし、実際にクラウドは安上がりといえるでしょうか。

 御存知のようにハードウェアなどの進歩により、サーバ性能やストレージ容量の単位当たりのコストは下がっていきます。それに対して、Amazon EC2を含め、パブリッククラウドの利用料はそれに見合うほど下がっているようにはみえません。

 つまり、費用対効果を考えると、最新の情報システムの性能を享受しようとすると、システムを自前で持つのに比べ、クラウドは割高になる場合があります。

 それでもクラウドの利用が増えているということは、前述の (1) 使いたいときだけサーバを使える、 (2) 所有から利用へ以外に、クラウドにはメリットがあると考えるべきです。