

ザッカーバーグ氏は予想された通り、自分たちにも通信事業はできる、自分たちが今後通信そのものを担っていく、と宣言した。そしてこちらも予想通り、伝統的なMWCコミュニティは、渋い顔を浮かべていた。
とはいえ、フェイスブックが通信サービスに乗り出すこと自体は、すでに進展している。昨年8月に彼らが中心になり“internet.org”というNGOが設立されたが、これは新興国向けにインターネットのインフラをつくっていくというものだ。彼らの他には、エリクソン、オペラ、クアルコム、サムスン電子、ノキア、メディアテックが名を連ねている。
また、フェイスブック自身も、新興国ではすでに通信事業そのものへの接近を強めている。東南アジアのいくつかの国では、「フェイスブック割」のようなSIMやサービスプランが提供されており、彼らのトラフィックは割り引く(あるいは無料)といったビジネスを展開している。そしてそれが決して酔狂な代物ではないのは、彼の地においてフェイスブックがもはや重要な生活インフラとなっていることからも分かる。
MWCがOTT事業者の挑戦を受けるのは、ザッカーバーグ氏が初めてではない。2010年のMWCでは、グーグルのエリック・シュミット会長(当時CEO)が講演し、文字通り「ブーイング」の洗礼を受けた。MWC2010に参加していた私は、上位層と下位層の対立という殺伐とした空気を肌で感じ、「これはなかなか大変なことになる」と思っていた。
しかしそれから数年が経ち、MWCでのGoogleのポジションは確固たるものとなった。Androidコミュニティはモバイルにおいてポジションを確立しているし、MWCに参加する事業者たちは、Android一辺倒の状態がしばし続いていた。
そう考えれば、フェイスブックのトレンドに乗っていこうという事業者が、MWCコミュニティの中からも多く出てくる可能性は否定できないし、似たようなアプローチを採る他の事業者は、それこそ中国勢も含め多数存在する。だとすると、彼らが通信サービスを手がけ、世界中にコネクティビティを提供していくというビジョンは、決して絵空事ではなくて、2~3年後にはすでに実現している未来なのかもしれない。