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スマートフォンの理想と現実

モバイルの高度化は構想から実現、普及へ
いよいよ動き出した産業の地殻変動

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2014レポート【後編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第60回】 2014年4月10日
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 ザッカーバーグ氏は予想された通り、自分たちにも通信事業はできる、自分たちが今後通信そのものを担っていく、と宣言した。そしてこちらも予想通り、伝統的なMWCコミュニティは、渋い顔を浮かべていた。

 とはいえ、フェイスブックが通信サービスに乗り出すこと自体は、すでに進展している。昨年8月に彼らが中心になり“internet.org”というNGOが設立されたが、これは新興国向けにインターネットのインフラをつくっていくというものだ。彼らの他には、エリクソン、オペラ、クアルコム、サムスン電子、ノキア、メディアテックが名を連ねている。

 また、フェイスブック自身も、新興国ではすでに通信事業そのものへの接近を強めている。東南アジアのいくつかの国では、「フェイスブック割」のようなSIMやサービスプランが提供されており、彼らのトラフィックは割り引く(あるいは無料)といったビジネスを展開している。そしてそれが決して酔狂な代物ではないのは、彼の地においてフェイスブックがもはや重要な生活インフラとなっていることからも分かる。

 MWCがOTT事業者の挑戦を受けるのは、ザッカーバーグ氏が初めてではない。2010年のMWCでは、グーグルのエリック・シュミット会長(当時CEO)が講演し、文字通り「ブーイング」の洗礼を受けた。MWC2010に参加していた私は、上位層と下位層の対立という殺伐とした空気を肌で感じ、「これはなかなか大変なことになる」と思っていた。

 しかしそれから数年が経ち、MWCでのGoogleのポジションは確固たるものとなった。Androidコミュニティはモバイルにおいてポジションを確立しているし、MWCに参加する事業者たちは、Android一辺倒の状態がしばし続いていた。

 そう考えれば、フェイスブックのトレンドに乗っていこうという事業者が、MWCコミュニティの中からも多く出てくる可能性は否定できないし、似たようなアプローチを採る他の事業者は、それこそ中国勢も含め多数存在する。だとすると、彼らが通信サービスを手がけ、世界中にコネクティビティを提供していくというビジョンは、決して絵空事ではなくて、2~3年後にはすでに実現している未来なのかもしれない。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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