3月27日、ヤフーによるイー・アクセスの買収が発表された。6月1日付けのイー・アクセスとウィルコムの合併を待って、翌2日にその新会社を買収するという流れである。新社名は「ワイモバイル」となる。
これによってヤフーは、伝統的な通信事業者ではなく、アプリケーションやサービスを提供するOTT(Over The Top)事業者として、日本では初めて、また海外でも例が少ない、通信事業への参入を果たすことになる。
一般的に、ネットワークにおける上位層であるOTT事業者は、下位層である回線事業者を「使い倒す」傾向にある。この傾向は、事業者の利益にも反映されており、これまでにも通信事業者の土管化であるとか、ネットの中立性といった形での議論が度々沸き起こってきている。
しかし、今回の買収は、それらのセオリーとは反対の方向のものであり、興味深い動きだ。なぜ、こうした動きが起きたのか、現時点で見えている状況から推測したい。
表面的な目的は
グループ全体での周波数戦略とカネ
改めて、なぜワイモバイルが成立することになったのか。背景として指摘できるのは、ヤフー、イー・アクセス、ウィルコムそれぞれの親会社である、ソフトバンクの意向が大きく働いているであろうということだ。
ソフトバンクの狙いは、おそらく二つある。ひとつは、来たるべき次世代通信規格に向けての新たな周波数割り当てに備えて、ソフトバンクが必ずしもコントロールが効かない事業者に対して、電波資源を譲り渡すことが必要ということだ。すでに週刊ダイヤモンドでも解説記事が掲載されているが、改めてここで振り返っておこう。
現在、周波数の事業者への割り当ては、総務省の諮問機関である電波監理審議会による答申に基づいて行われている。そこでは、電波を求める事業者による割り当て帯域を利用した事業計画の将来性だけでなく、既存の割り当て帯域の使用状況も考慮の上、審議される。すでに割り当てられている周波数の状況と、現在の加入者数とのバランスが勘案されるのだ。