大金持ちの長男が、借金まみれの親を手助けするため、弟たちの将来性を買って引き取ることにした──。
ヤフーが3月27日に発表した、国内携帯電話4位のイー・アクセス買収は、そんなふうに言い表すことができるかもしれない。
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ヤフーは、イー・アクセスがウィルコムを吸収合併して誕生する新会社の株式99.68%(議決権比率33.29%)を親会社のソフトバンクから3240億円で取得。「インターネットのサービス提供を第一にした通信事業を展開する」(宮坂学・ヤフー社長)という。
成長戦略を描く上で次の一手に困っていたヤフーは、今回の買収でキャリア事業という“武器”を手に入れる。加えて、加入者約1000万件、そして携帯ショップや量販店など約3000店舗の「拠点」も同時に獲得する。
そうした拠点で端末を販売する他、Eコマースなどのサービスも展開、ひいてはネット広告も伸ばしていこうという狙いだ。
これはソフトバンクにとっても「渡りに船」だった。
というのも、米スプリントの買収に伴い、ソフトバンクの有利子負債は計9.2兆円まで膨らんでいる。米国4位の通信事業者まで買収しようとしており、キャッシュリッチなヤフーから現金を引き出せた意味は大きい。
さらに、これをきっかけにグループ内再編も果たせる。
イー・アクセスは、データ通信を軸に、どこよりも安く、速い通信サービスで成長してきた。ところが、ここ最近は各社横並びとなり、独自色を打ち出しにくくなっていた。
そこで、グループ内のウィルコムと6月に合併させることにしていた。だが、起爆剤とはなり得ず、行き詰まっていたタイミングでヤフーから買収話を持ちかけられ、これまた渡りに船となったのだ。