ソフトバンクが空前の好決算をたたき出し、株価はこの1年間で2倍に跳ね上がっている。だが、その実態は、ビジネスモデルを根底から揺るがしかねないリスクをはらんでいる。
「営業利益は20年で300倍に、時価総額は50倍になった」
2月12日、ソフトバンクの孫正義社長は、2013年4~12月期の決算発表の席で高らかにぶち上げた。
今年は、1994年の株式公開からちょうど20年となる節目の年。公開当時、わずか30億円程度だった営業利益が、国内の通信事業者で群を抜く1兆円を突破することが確実となっただけに、頬が緩むのも無理はない。
孫社長は、「雲の上の、さらに上の存在であったNTTドコモ、KDDIを超えることができた」と胸を張った。
ここまで成長を遂げたソフトバンクの真骨頂は「時価総額経営」だ。まず、多額の借り入れを厭わずに、てこを利かせて大型買収を繰り返してきた。投資した企業数は約1300社にも及び、ヤフー・ジャパンなど大きく花開いたものも数多い。
その上で、得意のプレゼンテーションで投資家の期待感を膨らませて株価を引き上げ、時価総額を高めてきた。そうすることで資金調達を容易にし、新たな買収を仕掛けて連結ベースの利益を伸ばし、さらに時価総額を高めるという好循環を構築してきたのだ。
現在、ソフトバンクの時価総額は9兆円を超え、トヨタ自動車に次ぐ国内2位につけるなど、わが世の春を謳歌している。来期の14年度も「売上高7兆円、営業利益1兆円を確保する」と掲げ、その自信は揺らがない。
だが、ソフトバンクの実態を詳細に分析していくと、さながら「ソフトバンク劇場」を演出してきた時価総額経営が揺らぐ危うさを秘めていることが見えてくる。
まず、ソフトバンクは外国人投資家の割合が半数程度を占めており、株価がグローバルなマクロ経済の影響を受けやすい面がある。