初めて多数のパブコメが省令案を変えた!

 2013年5月に国会に提出された生活保護法改正案には、申請を要式行為(申請にあたって、必要な書類等を揃えておくことを義務化すること)としないことを明文化する修正(2013年5月)が加えられた。また、2013年5月から11月にわたって繰り返し行われた国会での審議では、「生活保護制度の運用はこれまでと同じ」「運用は変えない」「改正生活保護法の成立後、申請権の侵害につながるような運用を行うわけではない」という内容の政府答弁が繰り返された。

 2013年12月、改正生活保護法・生活困窮者自立支援法が成立した折には、引き続いて附帯決議が行われた。その内容は、生活保護制度が生存の最後の砦であることを認め、ついては申請手続きを要式行為とするなど申請を困難にする運用は行わず、親族による扶養も生活保護適用の前提や要件とはせず、やみくもに経済的自立を迫ることもしない……というものであった。

 しかし、この2月に公開された省令案は、これらの修正・附帯決議・国会答弁等を、まったく無に等しくする内容だった。もちろん、日本弁護士連合会・生活保護問題対策全国会議など貧困問題に取り組む数多くの団体が抗議の声をあげ、省令案に対するパブリック・コメント(パブコメ)の送付を呼びかけた。筆者も本連載で、繰り返し、読者の皆様へ「パブコメを!」と呼びかけた。結果として、3月28日のパブコメ締め切りまでに、1166通のパブコメが寄せられたという。省令案に対するパブコメとしては、例外的に多数だったといってよい。

 過去、パブコメが省令案を変えた実績はなかった。しかし3月7日、田村憲久厚労相は、衆議院での高橋ちづ子議員(共産党)の質疑に対して「パブコメの意見を踏まえて心配のないように対応したい」と答弁。つづいて4月15日、東京新聞は、

 田村憲久厚生労働相は15日の記者会見で、改正生活保護法で実務の大枠を定める厚労省令案について、パブリックコメント(意見公募)の結果を反映させて変更する考えを示した。「必要な修正があれば対応する」と述べた。

 と報道した(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014041501001370.html)。

 そして4月18日、厚労省令第五十七号が公布された。この省令の内容は概ね、改正生活保護法に加えられた修正・附帯決議・国会答弁の内容を具体的にしたものと言ってよい。多数のパブコメが、「省令案を変える」という前例を作ったのだ。画期的な出来事である。

 特に、本連載を読んでパブコメを送付された読者の方々に対して、筆者は心から感謝を申し上げたい。生活保護制度の今後については、事実に基づいた冷静な議論が重ねられる必要があると考えている。議論を重ねる前に強引に既成事実が作られてしまうような動きは、食い止めなくてはならないだろう。お一人お一人のパブコメが、強引な流れを食い止め、再考を促す力になったことは間違いない。