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任天堂だからこそできることは必ずある
市場調査では生み出せない前代未聞な商品を届けたい
――岩田 聡・任天堂社長インタビュー【後編】

石島照代 [ジャーナリスト]
【第52回】 2014年5月2日
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岩田 私は、その境目はどんどんなくなると思っています。「我々はプロフェッショナルだから特別だ」なんてまったく思っていませんし、プロ以上にすごい切り口をもった個人の方もたくさんいらっしゃいます。そういう力を自社プラットフォームのために活用するという点においては、任天堂は決して先頭を走っていませんし、むしろ世の中から遅れていると思っています。

 一方でドワンゴさんはそういうところにおいて、すごく尖っていますよね。もちろん任天堂がやってきたことをドワンゴさんがリスペクトしてくれているからこそ、私たちもドワンゴさんという、自分たちができないことができる集団と連携することで、もっと面白いことができそうだと考えているんです。昨年以来の、「ニコニコ超会議」でのお付き合いは、こういう背景があります。

 それからニンテンドーダイレクトというものが、海外より先に日本で世の中に広がった大きな理由のひとつに「ニコニコ動画」の存在があると思っているんです。「ニコニコ動画」では、自分が大真面目にしゃべっているところを、いじられたりからかわれたりするわけで、最初は私も正直なところかなり複雑な気持ちで見ていたんですけど、でもこれも含めて「伝えることがエンターテインメントに変わるとはこういうことか」と感じるようになり、そのうちに「こんなことをすれば面白がってもらえるのではないか」と茶目っ気をもって考えられるようになってきたんです。

 私たちの世界では、お客様がつくるコンテンツのことを、ユーザー・ジェネレイティッド・コンテンツ(UGC)なんて呼ぶんですが、今後、プロとアマチュアの境目なんて、限りなく見えなくなる方向になっていくと思います。プロのゲーム作家ではないけれど、プロのようにたくさんの人に支持された結果、その経済的な見返りも得られる人がこれからどんどん生まれていくんじゃないでしょうか。

 だからそういう人たちに場を提供しながらも、同時にあらゆる表現には喜ぶ人がいる一方で「傷つけられた」「許せない」という人たちも存在しますから、そこは運営の面でも努力しなければならないと思いますね。ただ境界はなくなると思いますし、私は今でもそこに明確な境界があるなんて思い上がってはいません。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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