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任天堂だからこそできることは必ずある
市場調査では生み出せない前代未聞な商品を届けたい
――岩田 聡・任天堂社長インタビュー【後編】

石島照代 [ジャーナリスト]
【第52回】 2014年5月2日
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岩田 私は、任天堂という会社を外からも中からも見てきましたが、「任天堂がスマートな会社」だと思ったことは一度もありません。おっしゃる通り、広く報道していただけた成功体験は一部に過ぎませんし、結果的に成功したとご評価いただいている商品でも、例えばニンテンドーDSもWiiも、発売前には否定的なご評価や報道も多かったのが事実です。

 社員の仕事も、比較できるような商品が世の中に存在しないため、市場調査でもニーズがわからない、実際に触っていただいて初めて「そうそう、こんな商品が欲しかった」とお客様に実感していただける、そんな商品を開発し、お客様にご理解いただけるように情報発信してお届けするという企業活動は「スマート」という言葉とはかけ離れた、むしろ地道で泥臭いものです。

 反面、そんな前代未聞な商品を世界中でご評価いただけた時の感動は他では決して味わえないものですし、業績不振と報道される今も、いや、むしろそんな時だからこそ、任天堂社員はみな、自分たちの腕の見せどころと、やる気満々です。

 また、Wiiは発売直後から一気に広がった印象があるので、誤解を受けやすいのですが、新しい娯楽というのは全てが瞬時に広がるものではなく、口コミでじわじわ広がるものが多いということをご理解いただけたらと思います。ニンテンドーDSも「脳トレ」が日本で広がるまでにかなりの時間がかかりましたし、その後海外でも勢いがつくまでにかなり時間がかかりました。

 そして、ニンテンドー3DSはスマートフォンの普及との対比で苦戦しているように報道されがちですが、過去15年間に、ニンテンドーDSを除いて過去のあらゆるゲーム機が日本で年間400万台を超えて売れたことはないのに、ニンテンドー3DSは発売から3年間続けて、毎年400万台を大きく超えて売れている事実は、お話ししてもなかなか報道していただけません。海外も含めると、ニンテンドー3DSは、昨年末時点で既に世界中で4300万台近く売れており、その魅力は口コミで広がりつづけています。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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