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角川によるフロム・ソフトウェア買収の深層
――日本のゲーム産業は世界で輝きを取り戻せるか

石島照代 [ジャーナリスト]
【第50回】 2014年4月30日
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角川ゲームス&フロム連合軍に期待されるのは
世界競争を勝ち抜く日本のものづくり

 しかし、その一方でこれまで述べて来たような話では説明できない成功事例も少なからず存在している。たとえば、レベルファイブの「二ノ国 白き聖灰の女王」(PS3用)は日本のアニメーション的要素の強いJRPGながら全世界で110万本、アトラスの日本的な2Dキャラクターによる横スクロールアクションゲーム「ドラゴンズクラウン」(PS3・PSVITA用)が全世界で100万本のそれぞれ販売実績を出すなど、日本人らしい職人気質と独自性を有するゲームは日本に限らず全世界で支持されている。

 さらには、世界市場と言えば北米、欧州市場であったのはこれまでの時代であり、これからは、アジア地域や新興国へとゲーム市場は多様性を高め拡大していくだろう。したがって、日本のアニメやコミック的なテイストになっているキャラクターゲームも、親和性の高いアジア市場で更なるビジネス成長を遂げる可能性は高い。

 このように、厳しい海外市場でも、今後日本勢が勝てる見込みがまったくないわけでもない。角川ゲームス&フロム連合軍は、両社が持つ高い国際競争力を武器に、地に足をつけて、世界中のユーザーとの長期的な信頼関係を築いてほしい。時間はかかるだろうが、ユーザーと真正面から相対してまじめにこつこつと良質な作品を作り続ける姿勢こそが両社の持ち味であり、ユーザーの支持を得られた理由であったと思うからだ。

 もうすぐ、家庭用ゲーム業界における世界最大級のイベント「E3(Electric Entertainment Expo)」の季節がやってくる。近年はすっかり日本勢の存在感が薄くなってしまったが、2000年初頭のイベントは「日本人にあらずんばゲーム業界人にあらず」というほどに、日本人の存在感は強かった。筆者が初めて行った2001年の E3では、開発者でもないのに、日本人というだけで欧米はもちろん、アジアや中南米など世界中から訪れたゲームファンや関係者の皆さんに大変歓待していただけた。

 E3の取材時ほど、自分が日本人でよかったと思えたことはなかった。あの頃の輝きを日本のゲーム産業は取り戻せるのか。角川ゲームス&フロム連合が世界市場に新たな風を吹き込み、日本市場がまた盛り返せるよう期待している。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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