日本オラクル代表執行役 社長 CEO。1982年フォーバル入社。89年フォーバルアメリカ取締役ジェネラルマネージャー。93年インターテル、2001年EMC、09年シスコシステムズ、10年日本HPを経て2013年米国オラクル・コーポレーションシニア・バイスプレジデントに就任。2014年4月より現職。通信機器からサーバー、システム導入まで、また企業規模も中小企業から大企業まで、ITに関する幅広い知識と経験をもつ。 Photo by Toshiaki Usami
今年4月から日本オラクルの新社長に就任した杉原博茂氏は、「クラウドと言えばオラクル」というビジョンを掲げる。しかし、現在のオラクルの事業全体にクラウドが占める割合はごくわずかである。既存の主力事業との整合性もはっきりしない。オラクルが考えるクラウドとは何か、また日本のIT市場にどのように取り組むのかを聞いた。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 指田昌夫 撮影/宇佐見利明)
――日本オラクルの社長になる前の半年間は、米国オラクルのスタッフとして働いていたそうですが、そこでの業務はなんだったのでしょうか。
昨年10月から、米国オラクル本社のマーク・ハード社長直轄スタッフのチーフとして、グローバル事業のチェックを行ってきました。具体的には、米国以外の世界各国の事業、つまり欧州、南米、そして日本を含むアジア太平洋など各地区の事業の状況を見て回り、本社の経営陣に伝えることと、逆に本社の事業方針を現地の拠点に正しく伝えることが仕事でした。新しいテクノロジーだけでなく、開発・人事・財務・法務など経営全般の情報共有を図る役割です。
世界のIT市場から見た日本の特異性
――グローバル部門から日本法人の社長に就任するにあたり、世界のIT市場からみた日本市場と日本オラクルは、どう見えましたか?
オラクルの創業者であり現CEOのラリー・エリソンは、日本に対して「第二の故郷」という非常に強い思いを持っています。そのせいもあって、オラクルにとって日本は特別な国です。
その一方で、日本のIT市場や日本オラクルの事業は、深く理解されていないところがあります。変化が激しい世界のIT市場にあって、日本オラクルだけが10年前と直近の売り上げのミックス(事業セグメント別の構成)が変わっていないからです。オラクルはその成り立ちがデータベースのソフトウェアから来ていますし、事実データベース関連の売り上げはいまも高い。しかし、たとえば欧州では、データベース以外のアプリケーションの売り上げはここ10年で順調に成長し、バランスのよい構成となっている。「日本の市場は一体どうなっているんだ?」と本社の幹部からも質問を受けています。