民主党のバラク・オバマ上院議員が11月の共和党との大統領選本選に向けて本格的に走り始めた。(5月13日にウェストバージニア州で行われた民主党指名争いの予備選ではヒラリー・クリントン上院議員に敗退したものの)、圧倒的優位な状況に変わりはない。オバマ氏の攻撃の矛先も、クリントン氏から共和党指名候補に予定されているジョン・マケイン上院議員へとすでに移っている。
だが、果たして“マケイン共和党候補”に本選で勝てるのか。100%の確信を持っている人は、米国の知識層では少ないだろう。
いわずもがな、マケイン氏は「信念の人」である。どんなに批判を受けようが、イラク戦争を一貫して支持し、イラクへの米軍増派戦略にも賛成したように、自分自身の信条で戦ってきた政治家だ。本選でもどんな問題に対しても逃げずに自分の考えを明確に述べていくはずである。
対して、オバマ氏は、(「チェンジ」という言葉に象徴される)耳障りのいい言葉を頻発しつつも、自分が何者なのか、何を信じているのかを明らかにしてない。米国民も今のままの彼を大統領にまで選ぶことには、不安を感じているはずだ。
確かに、オバマ氏が若いながらも優秀な政治家であることは認める。ただ、白人にも彼と同等に若く優秀な政治家はたくさんいる。国政の世界で上院議員になってからわずか2~3年でここまで上り詰めた政治家はいない。優秀という言葉だけでは説明がつかない。
白人の罪意識に訴える
人種問題の交渉人
では、オバマ氏はなぜここまで勝ち進むことができたのか。それはひとえに、オバマ氏の存在が人種問題に関する白人の罪意識を軽減してくれるからだろう。
米国では白人であるということは、すなわち人種差別主義者であると烙印を押されたのと同じことを意味する。大半の白人はむろん自分が人種差別主義者であるとみなされたくないと感じているものだ。